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見たことがない就業規則に効力はある?周知義務・方法を解説

更新日:2024年01月30日
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会社には「就業規則」が設けられていますが、入社時に少し閲覧しただけでそれ以降目に触れていない方も多いでしょう。
いつもは特に就業規則について気にならないかもしれませんが、会社と何かしらのトラブルを抱えた時は、就業規則に立ち返らなければならないときもあります。
本記事では、就業規則はどのような条件において効力が発生するのか、そしてその周知義務や方法を説明します。ぜひ参考にしてください。

そもそも就業規則の存在意義とは?

就業規則とは、労働条件や職場規律などについて会社が規則として定めたものです。
就業規則を定めることによって、労働者に適用される基本的な労働条件が決まります。

労働者は、入社時に会社との間で労働契約を結びますが、基本的には「就業規則の労働条件=労働契約の内容」になります。
したがって、わざわざ労働者一個人と細かい労働条件について合意する必要性がない仕組みになっています。

就業規則で規定されるべきこと

就業規則には、さまざまな労働条件が定められていますが、必ず規定されるべきことは、下記3点です(労働基準法89条)。

  1. 始終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する事項
  2. 賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切・支払時期、昇給に関する事項
  3. 退職・解雇に関する事項

就業規則がない会社ってある?

では、就業規則が存在しない会社もあるのでしょうか。

例えば、常時労働者が10人未満といった小規模な会社は、就業規則を設けていない場合もあります。
しかし、それよりも大きな規模を持つ会社は、就業規則を設けるのは必須となります。

そしてもし、就業規則を閲覧したことがない場合、その規定が労働条件になるのでしょうか。
基本的には、「就業規則の労働条件=労働契約の内容」と説明しましたが、法律でその根拠が定められています。では、労働契約法7条の本文を確認してみましょう。

労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。

このことより、就業規則の労働条件が労働契約の内容となるには、下記2つの条件を満たしている必要があります。

  1. 就業規則に合理的な労働条件が定められている
  2. 使用者が就業規則を労働者に周知させていた

効力を持つ条件①「合理的な労働条件」

「合理的な労働条件」という言葉は抽象的である印象を受けるでしょうが、基本的に裁判実務では、個々の規定について会社側と労働者側の利益を比較しつつ判断します。
例えば、就業規則で「残業命令権」を規定しようとした場合、会社の「残業してほしい」という利益と、労働者の「プライベートの時間をちゃんと確保したい」という利益の間で衝突が起こります。

これについては、会社側の売上目標を達成するために会社に「残業命令権」を与えることにも合理性が認められるといった具合です(日立製作所武蔵工場事件・最高裁第1小法廷平成3年11月28日判決)。

効力を持つ条件②「周知させていた」

「周知させていた」という条件についても解説します。
労基法では、就業規則の周知方法として、下記3つを規定しています。
①就業規則を見やすい場所に掲示する
②労働者に書面を交付する
③労働者がパソコン等を利用して就業規則の内容を閲覧できるようにする

基本的にはこれらの方法で、会社は労働者が就業規則の内容を見たいときにいつでも閲覧することができる状態を整える必要があります。
そのため、「就業規則を金庫内で保管する」とか、「就業規則が社長室にある」といった、労働者にとって閲覧しづらい環境では「周知させていた」とは言い難いのです。

周知義務を怠った場合の罰則とは

このように、就業規則の周知義務を怠っていた状態があれば、労働者に対する効力が発生しないのはもちろんのこと、会社側は「30万円以下の罰金」という罰則を与えられる可能性もあります。

労働者が単に読んでいなかっただけの場合

それでは、会社は周知義務を守っていたものの、労働者がきちんと就業規則に目を通していなかった場合はいかがでしょうか。
これは、「労働者が就業規則の内容について把握していたか」を問わず、基本的には就業規則の効力が生じます。
まとめると、会社が周知義務を守っていなかった場合は就業規則の効力はなく、単に労働者が内容を把握していない場合は効力があるということです。

就業規則の周知義務にまつわる判例は

しかし、「就業規則が周知されていたか否か」が争点となった裁判例では、第一審で「周知されていた」と一度は認められた結果が、第二審では「周知が行き届いていなかった」と認められて結論が変わったこともあります。

また、例えばですが、「労働者には就業規則があることを知らせずに、社内共有フォルダに何も言わず就業規則を格納していた」という、周知について曖昧なケースでは、どのような判断となるか、難しいところです。
無用なトラブルを避けるためは、会社側は労働者が労働条件を理解しやすい環境整備をすることだけでなく、明確に就業規則を周知させることが必要です。

就業規則を読むことの重要性

労働者側の立場から言えば、やはり就業規則を読み内容を理解しておくことは大切です。
もちろん、一字一句すべてを覚えることは不可能ですが、手当や休暇などについてきちんと把握しておくことで、自分のメリットにもなるでしょう。
ぜひ、時間を見つけて一度は就業規則に目を通しておきましょう。

労働条件をめぐるトラブルは弁護士に相談を

本記事では、就業規則の周知義務に関しての裁判例も紹介しました。
実際に、就業規則にまつわるトラブルを抱えた際は、法律の専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。

弁護士からのサポートを受けることで、速やかにトラブルを解決しやすくなります。

しかし、やはり弁護士費用の負担が心に引っ掛かる方も多いでしょう。
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