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仕事を与えない「過小評価」もパワハラになるの!?

更新日:2024年01月30日
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「パワハラ」と聞けば、上司が部下に暴言を吐いたり無理難題な要求をすることを、想像しがちかもしれませんね。

しかし、相手の能力を過小評価する行為も、実はパワハラに含まれます。
本来の能力を評価されず仕事を与えられないような職場環境であれば、その本人は大きな苦痛を感じます。

本記事では、あまりスポットライトを浴びることのなかった「過小評価」というパワハラについてみていきましょう。

ドラマ「エイジハラスメント」にみる過小評価行為

2015年に放映された武井咲さん他演じる「エイジハラスメント」では、職場内の複雑な人間関係やパワハラをリアルに描いています。
本ドラマでも、英美里(武井咲)が過小評価のパワハラを受けるシーンがあります。

下記では、そのシーンのあらすじを紹介します。

英美里(武井咲)の上司である百合子(稲森いずみ)は、社内で不倫をしていた。
不倫相手は社員の保科(小泉孝太郎)。ある時から百合子は、保科と英美里の関係を疑うようになる。

そして、百合子は英美里を食事に誘い出し保科との関係を聞き出そうと画策したものの、特に確証を得られる答えは得られなかった。

モヤモヤがおさまらず英美里への嫉妬心を募らせた百合子は、英美里に過小評価行為のパワハラを始める。
その日から英美里は百合子に仕事を取り上げられてしまった。

百合子が保科と不倫していることや自分が保科との関係を疑われていることなど知らない英美里は、急に仕事がなくなり困惑するばかりだった。

「仕事を与えない」というパワハラもある

まず「パワハラ」とは、職務上の地位を利用し、立場が上の者が下の者に対して精神的・肉体的苦痛を強いる行為のことです。
具体的には、上司から部下への暴力・暴言、無視、過剰な要求などです。

先に紹介したドラマ「エイジハラスメント」でもみられたように、上司が明らかに部下の仕事を取り上げたり、能力を過小評価し雑用しか頼まないこともパワハラとして認められます。
厚生労働省も「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」で、パワハラの行為類型の一つとして「過少な要求」がパワハラになることを公表しています。実際にみてみましょう。

職場のパワーハラスメントの行為類型(報告書p5・6)
職場のパワーハラスメントの行為類型を以下のとおり列挙した(ただし、職場のパワーハラスメントのすべてを網羅するものではないことに留意する必要がある。)。
類型 具体的行為
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
出典:平成24年1月30日付 厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」

過少評価パワハラの訴訟例

では、過小評価のパワハラで訴訟に発展した例はあるのでしょうか。
過去に、明らかに能力を過小評価した業務命令を長期間継続して部下を隔離し精神的苦痛を与えたことが認められた事例があります。

【隔離及び自宅研修】(東京高判平成5年11月12日)
本事案では、学校法人Yの高等学校の教諭Xが受け持っていた授業やクラス担任などのすべての仕事を外されました。そして、それ以降も仕事がないまま4年半の間も別室に隔離され、さらに7年近く自宅研修をさせられていました。また、一時金の不支給・賃金の据置といった差別的扱いをされており、不法行為であることが認められ、学校法人Yは損害賠償600万円を請求されました。

判決では、YがXに行ったことは不利益な取り扱いであることが認められ、その原因は、「感情的な校長の嫌悪感がきっかけとなり、その後も些細なすれ違いから、Yは執拗に始末書の提出をXに強要しようとした。しかしXが応じないことに腹を立てたことが認められる」としました。

そして、「このプロセスでXの態度にも落ち度がないわけではないが、Yの行った言動あるいは業務命令等を正当づける理由にはならない。これらの行為は、業務命令権の濫用として違法かつ無効であるのは明確でYの責任は非常に重大である」と発表しました。

一般的に、過小評価のパワハラについては、「本当に相手の能力を過小評価しているのかどうか」という判断基準が不明確です。したがって、過小評価のパワハラは裁判で認められづらいと言えます。
しかし、本事例は明らかなパワハラとして認められました。

裁判においては過小評価を受けて嫌がらせをされた期間や他の従業員と比較した仕事量など客観的な事実が考慮されます。
もし過小評価のパワハラの件で訴訟を起こすのであれば、そのような証拠集めをするようにしましょう。

過小評価のパワハラで裁判を起こすなら弁護士に相談を

不当な過小評価を受け続ければ、言葉で表せないほどの精神的苦痛を強いられるでしょう。
そこで、「相手を訴える」という選択肢が頭によぎることもあるはずです。

もちろん裁判を提起するのは個人でも可能ですが、法律の専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。
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