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退職届を提出せずにバックレしたら会社から損害賠償を請求される?

更新日:2024年01月30日
退職届を提出せずにバックレしたら会社から損害賠償を請求される?のアイキャッチ

「思ってたような会社ではなかった。こんな会社、もうやめたい。」
「上司と合わない。仕事に行くのがつらすぎる。」
こんな悩みを抱えていると、「いっそのこと、バックレてしまいたい」と考えてしまう方もいるかもしれませんね。
しかし、実際にバックレたら損害賠償を請求されるのかについては、よくわからない方も多いでしょう。
そこで本記事では、もし仕事でバックレたらどのようになるのか損害賠償請求のことも含め解説します。

バックレにより会社が受けるダメージ

当然のことですが、従業員が急に出勤しなくなれば会社は大迷惑を被ります。
これは社員に限らずパート・アルバイトでも同じことが言えます。本人が担当している業務がある以上は、仕事に穴を開けると会社の経営に多大な影響が出ます。

従業員を採用してある程度の仕事を任せられるようになるまでには教育のコストが掛かります。
そのため、従業員が思わぬ形でバックレるなんて事態は会社にとって損失以外何ものでもありません。

会社の損害賠償請求は認められる?

会社は被った損害を従業員へ請求できるのでしょうか。
実は、それは非常に難しいことです。

例えば、従業員がオフィスを掃除していたときに備品を壊してしまった場合を考えてみましょう。このとき会社としては、当然損害が発生します。
損害は従業員のミスにより発生したものなので、順当に考えれば従業員側に損害賠償をする義務が生じるでしょう。

ですが、このようなケースにおいて実際に従業員に損害賠償請求がされることはありません。その理由は過失が原因である損害は、細心の注意を払っていても起こり得るものなので、仕事に内在するリスクは会社側が負うものと考えられるからです。

(これが例えばですが、仕事のストレスのはけ口にするために備品を壊した場合(故意)、多数の来客用コップを一度に運ぼうとして落として割った場合(重大な過失)などはその限りではありません。)

また、従業員は会社という組織に比べて資力がありません。会社が損失を負ったからと言っても、一個人に過剰な責任を負わせるのは難しいのです。
実際に判例を見ても、重過失があった従業員に対する損害賠償請求でさえ、会社は損害額のうち4分の1程度しか従業員に請求できないという判断がなされています。

退職により生じる具体的損害とは?

急に自主退職した従業員に対して会社が損害賠償請求をする場合、さらに障壁があります。
それは従業員の退職に際して、発生した具体的損害を会社がきちんと証明できない場合が多いということです。
例えば、飲食店のアルバイトがある日突然無断欠席し始めた場合、想定外の少人数で仕事を回したり休みの人にヘルプを頼むなどの対応をせざるを得なくなることもあるでしょう。ただし、そうしたにしても会社側に具体的な金銭的損害が発生したかと言えば、そんなことはありません。

また、仕事のために資格を取らせたりしていた従業員が突然バックレた場合、その研修コストは損害額に該当するように思えます。
しかし、その従業員側からすればそのような研修を受けたり資格をとること自体が仕事であるため、会社はその費用を負担するのは当然です。そして、そこに損害は発生していないということになります。

したがって、「退職したら、研修にかかった費用を請求する」と言えば会社が従業員を金銭面で脅して会社に拘束している状態になるため労基法上問題となります。(労基法16条)

労働基準法第16条
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

これに対して、労働者が自分の利益のために研修や留学等に参加して、その費用を会社が負担していた(立て替えていた)場合には、その費用(立替金)を返せという請求も認められることがあります。

契約期間中の退職は損害賠償請求の対象

労働契約を期間で締結していた場合(平成27年4月1日から9月30日までなど)、会社・従業員どちらもやむを得ない事情がない限り労働契約を解除できません。
そして、正当な理由なく労働契約を解除した際は、相手方に生じた損害を賠償することになります(民法628条)。
従業員側からすると、病気になった場合や給料が支払われない場合、入社してから酷いいじめを受けた場合などの事情があれば期間途中であっても労働契約を解除できます。

一方で、仕事がつまらなくなったなどの身勝手な理由では契約期間中は自主退職できません。
ただ、この条文を用いてもなお会社は従業員に損害賠償を請求するのは難しいのです。
では損害賠償を従業員に請求できるのはどのようなケースなのでしょうか。
それは、例えば5年間にわたるプロジェクト実施のために、専門的な知識を持つ従業員と5年間の労働契約を締結したのに、途中でその従業員が突然退職してしまい、プロジェクト自体が頓挫してしまい違約金が発生したといった場合です。

このケースは、従業員が突然退職したことによる損害額が算出しやすいので、実際に損害賠償請求が認められる場合も十分あるでしょう。
実はこれまでにも、上記のようなケースで200万円の損害賠償を請求された事件があります。(ケイズインターナショナル事件 平成4年9月30日東京地判)
※判決は70万円の支払命令でした。

話を戻しますが、飲食店のアルバイトがたとえ労働契約の期間途中で退職しても、会社は他の従業員で仕事を回すようにすれば対応できないことはないので、具体的損害を客観的に証明することは困難なのです。

勝手に辞めるのはNG

会社を辞めたくても上司になかなか言い出せないケースは、少なくないでしょう。

日々悶々としながら働き続けるのは、ストレスが蓄積していくだけです。

とは言え、いっそのことバックレてしまおうなんて考えは、絶対に辞めておきましょう。
もちろん、常識的にということもありますが会社側が悪質な対応をする場合「〇〇円相当の損害を受けたから、支払ってください」などと高額な請求をしてくる場合もあります。
従業員側もそのような請求をされてしまったら、たまったものではありません。

困ったら弁護士へ相談を

会社という大きな組織との交渉力の差を埋めるには、法律の専門家である弁護士のサポートが重要です。
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編集部

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