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ボーナス支給日前に退職届を出したらどうなる?ボーナスなしは違法なのか?

更新日:2024年01月30日
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ボーナスは、毎月の給料に加えて会社の業績・従業員の貢献度などを評価して臨時で支給されるものです。
ボーナス支給条件は基本的に労働契約・就業規則で決まっているのが一般的です。
ただし、支給時期や用件、計算の仕方については各会社が自由に決定しているのが実態です。したがって、会社により支給条件はさまざまなのです。

ボーナスについての一般的な就業規則の規定

では、一般的な就業規則の規定について確認してみましょう(参考:厚労省モデル就業規則)。

第46条 賞与は、原則として、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

算定対象期間 支給日
12月から5月まで 6月15日
6月から11月まで 12月15日

2 前項の賞与の額は、算定対象期間(評価対象期間)における会社の業績及び労働者の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する。
3 第1項の支給日に在籍しない労働者には、賞与を支給しない。

直前6か月の勤務成績に準じて、6月と12月の15日にボーナスが支給される規定になっているのがわかります。

退職者へのボーナス支給に関する法律はあるの?

ボーナスは会社の就業規則によるということは説明した通りです。
そこで、皆さんが疑問に思うのは「退職者へのボーナス支給に関する法律はあるのか?」ということでしょう。
実は、労働基準法においてボーナス支給に関する法律は存在しません。
そのため、これに関しては「会社の就業規則が全て」となります。

退職者へのボーナス支給に関する就業規則上でみられるルールとは

上述したように、ボーナスの支給に関しては支給要件や時期、金額の計算方法については会社側が決定して良いものです。
それでは退職者へのボーナス支給に関してよくあるルールをみていきましょう。

ボーナス支給日前に退職したら賞与は支払わなくても良い

まずは、第3項の「支給日に在籍しない労働者には、賞与を支給しない」といった規定です。
これは「支給日在籍要件」といいます。
具体的には「賞与の算定対象期間(評価期間)に勤務していても、支給日前に退職した労働者には賞与を支払わない」という条項です。
従業員側にとっては不利な規定ですが、このような規定を設けることは法的には問題なく有効とされます。

そして実際に、この規定を定める会社は多く存在しています。
では例として、就業規則に先ほどの「第46条」の規定が設けられている会社に勤務するAさんが、6月10日付で自主退職した場合をみてみます。
Aさんの視点に立てば、「12月~5月の半年間働いた分のボーナスをもらう権利があるはず」と考えるでしょう。
ただし、この例において会社としては、第3項の「支給日在籍要件」があるので、ボーナスを支払わなくても良いという状態になります。
そして、会社の就業規則に第3項のような明文の規定が存在しなくとも、「これまでも支給日に在籍している従業員のみにボーナスを支給していた」という慣行が労使間で成立している場合も、Aさんにボーナスを支払う必要はなくなります。
一方で、会社の就業規則に第3項のような規定が存在せず、いままで退職者には月割りでボーナスが支払われていた事実があれば、Aさんもボーナスを請求することができる可能性は高まります。

ボーナス査定の対象期間中に、一定期間在籍していない場合は支払わなくても良い

ボーナスには、「査定期間」と呼ばれるものがあります。
査定期間は、従業員の勤務態度などを考慮しつつ、それを金額に反映させるための重要な期間になります。
各会社で査定期間はさまざまですが、その期間中に一定期間以上在籍していない従業員はボーナスの支給対象から外すという規定を持つ会社もあります。

解雇・契約期間満了・定年退職の場合はどうなる?

では、Aさんの退職が自発的なものではなく、会社都合の解雇・契約期間満了、定年退職の場合はどうなるのでしょうか。このときAさんが自らの意思で退職日を選べるわけではありませんが、その場合でも支給日在籍要件は適用されるか疑問に思いますね。
裁判所は、定年退職の場合も、支給日退職要件は受給資格者を明確な基準で確定する必要から定めているため有効であると判断していますが(カツデン事件・東京地裁平成8年10月29日判決)、実のところ反対意見も多くあみられます。
このことについては、今後の裁判例によって結論が変わる可能性もあります。

ボーナス支給日前に退職届を提出し、支給日後に退職するときは?

仮に、Aさんがボーナス支給日より前に退職届を提出したものの実際に退職する日は支給日後の6月30日である、といった場合、会社がAさんにボーナスを支払わないことはできるのでしょうか。
すでに説明したとおり、会社側はボーナスの支給条件を自由に決定できます。そのため、例えば「支給日以降に退職が予定されている場合、賞与を減額のうえ、支給できる」というような規定を設けることも可能です。
その理由としては、ボーナスにはこれまでの働きぶりはもちろんですが今後の期待の意味も含まれるからです。
しかし、これまでに退職予定者のボーナスを8割カットした事例がありましたがその際は「将来の期待部分として減額できるのは2割が限度」とされました。(ベネッセコーポレーション事件・東京地裁平成8年6月28日判決)。
これに倣えば、Aさんに退職の予定があるとは言え「ボーナスを一切支払わない」といった極端な対応は法的に認められないのです。

退職時のボーナスでトラブルになった際は弁護士に相談を

ボーナスの支給に関する規定に関しては、各会社の就業規則によりまちまちです。そのため、極端な話、「ボーナスは支給しない」と会社が定めていればそれはそれで特に問題ないのです。
ただ、これまでに退職予定者のボーナスを減額したことでの裁判例も存在します。実際に、ボーナス支給をめぐって会社と従業員間でのトラブルは現実的に起こり得るのです。
そこで万が一、ボーナス支給に関するトラブルが起きてしまった場合は、労働問題に強みを持つ弁護士に依頼することをおすすめします。
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