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半日や1時間単位での有給はもらえるの?実態を解説

更新日:2024年01月30日
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働いてる皆様にとって、有給休暇があることは心の支えになるでしょう。

有給で旅行に出掛けたり家族との時間を過ごしたりするのは、プライベートの充実にもつながります。

基本的に有給と聞けば、丸一日の休みをもらうことを思い浮かべる人が多いでしょうが、半日や時間単位ではもらえないものかと、ふと疑問に思うことも出てくるかもしれませんね。

本記事では、半日や1時間単位での有給はもらえるのかを解説しています。ぜひ参考にしてください。

会社が半休(有給)取得を認めてくれないときは

「半休」という休み方も今ではメジャーになっています。
丸一日仕事を休むほどではないが、ちょっとした用事を済ませるために仕事を数時間抜けたいという需要はよくあるものです。

半休とは?

そもそも半休とは何でしょうか。
半休とは、「半日休暇」の略です。これは、リフレッシュを目的とする、法律で定められた従業員の「権利」です。
実は半休は、法律で規定されているわけではありません。
そのため、本来、会社は必ずしも半休制度を設けなくてもいいのです。

会社によってさまざまである半休制度

それでは、従業員から「半日単位で年次有給休暇を取らせてほしい」という届け出があった場合、会社はこれに応じなければならないのでしょうか。
実は、会社は半日単位で休みを付与する義務を持っていません。

一日未満単位での年次有給休暇を認めてしまえば、会社が休む理由を聞いてその所要時間に限定した休みしか認めないという事態を招きかねません。そもそも、本来年次有給休暇は従業員のリフレッシュのために存在しています。そのため、原則、「年次有給休暇は1労働日を単位として取得する」のが行政解釈です(昭63.3.14基発150号)。
ですが、これは単に半日単位で与える「義務がない」と言っているに過ぎず、労働者が半日単位での休みを申請した際に認めてはいけないというわけではないのです。
したがって法的には、「会社側が認めさえすれば、半日単位での年次有給休暇は取得可能」という結論になります。

「半日」とは

では、半休でいう「半日」とは何時間なのでしょうか。

ここで、問題を出しますのでぜひ考えてみてください。

Aさんが従業員として働く会社の所定労働時間は、8時30分~正午までの3時間半、その後休憩を挟んで13時~17時30分までの4時間半です。
したがって一日あたりの所定労働時間は合計8時間となっています。
ある日のこと、Aさんは家の事情があり午前中に半休をとりました。
この日、Aさんは何時に出勤したでしょうか?

答えを考えてくださった皆様は、「13時」もしくは「13時30分」が正解だと思ったのではないでしょうか。
実は、法的には両方とも正解です。

上述したように、半休は会社が認めれば適用されるため、半休の境目をどこにするか(昼休みとする、もしくは、労働時間のちょうど半分の時刻とするかは)は、会社と労働者との間で取り決めできるのです(しかし実際は就業規則で定められているケースが多いでしょう)。

この場合ですと、半休を午前にとると3時間半の休みをもらうことになります。
一方、午後にとると4時間半休めるため、午後に半休を取る方が少し長く休めるのです。

半休取得のメリット・デメリット

こちらでは、半休を取得するメリットとデメリットについて説明します。

半休取得のメリット

ではまずメリットからみてみましょう。
メリットは、従業員がある程度自分の都合に合わせて働ける環境を整えられるため、ワークライフバランスの実現を実現できることです。
「一日休むほどではないが少し会社を抜けたい」というとき、半休があれば、スムーズに用事を済ませられ、業務遂行にも大きな支障をきたさずに済みます。そして当然、従業員にとって働きやすい環境があれば従業員の定着にもなります。

半休取得のデメリット

反対に、半休取得によるデメリットは、会社側の負担が増えてしまうことです。

例えば、半日分の給与計算に加え、休暇残数の管理など人事の業務負担が増えます。
しかし、現在は便利な勤怠管理ツールなども普及しているので、それらを活用すれば管理の負担も軽減できるでしょう。
勤怠管理ツールを利用すれば、給与計算・従業員の有給休暇の管理を自動で行えます。

半休を取得して残業した場合は?

ここで、「半休をとって残業したらどうなるの?」という疑問も出てくるかもしれませんね。
では、ここでまた問題です。
Aさんはある日、午前に半休を取得し13時に出勤しました。
しかし、この日は定時の17時30分までに業務を終えることができず残業して、退勤したのは19時30分でした。
このときAさんは残業した2時間について、残業代をいくら支給されるのでしょうか?もしくは、まさか支給されないのでしょうか?
Aさんは時給2,000円で働いているとして計算してみてください。
答えは「4000円」「5000円」「もらえない」のどれになるでしょうか?
法的な正解は「4000円」です。

2時間は残業として働いているため、当然4000円分の賃金は生じます。
そして、労基法上の時間外割増賃金(25%)が問題になりますが、この割増賃金は「実労働時間」が8時間を超えたときにだけ加算されるものです。
この日のAさんは半休を取り13時から19時30分までの6時間半しか働いていません。したがって、時間外割増賃金は発生せず、2,000円×2時間分が残業代として支給されることになります。

労使協定を締結することにより1時間単位で有給取得ができる

日本では年次有給休暇の取得率が5割程度しかないので、さらに年次有給休暇を活用することが推奨されています。
また、労働者側も年次有給休暇を半休のように細かく分けて利用したいというニーズが実在しています。

それを背景として、平成22年には労働基準法が改定され、時間単位でも年次有給休暇を取得できるように改善されました。
改正労基法39条4項は、使用者は、事前に労使協定を締結することにより、年5日以内に限り時間を単位として年次有給休暇を与えることができる、と規定されています(なお、この労使協定とは、労働組合または労働者の過半数を代表する者との書面による協定を指します)。
この改正では注意すべき点があります。
一つ目は、先程から述べてきた半日単位の年次有給休暇については、この制度と関係なしに運用できます。

したがって、労使協定を締結する必要性もありませんし、「年5日以内」にもカウントされないのです。
そして、「時間未満」の単位での取得は認められません。(「2時間」や「4時間」を単位にするのは可能)。
会社側もあまりにも細切れの時間での休みを与えるとなれば管理が煩雑になります。

なお年次有給休暇はあくまでもリフレッシュのために設けられている制度であるため、細切れでの休みを積極的に認めることはしなかった結果であると解釈できます。

そのような意味でも、この「時間単位付与」という制度はやはり特別なものです。
会社としてはこの制度の運用にあたり、十分注意を払うのがよいでしょう。

半休をめぐる労働トラブルが生じた際は弁護士に相談を

半休取得ができることで、従業員のワークライフバランスはいっそう実現しやすくなります。

しかし、半休は取れても残業した場合に、適切な残業代が支払われないケースなどのトラブルもみられます。
残業代の計算は会社ごとに細かな規定があり、正しい金額を計算するにあたっては労働基準法に通じていないと困難なこともあります。

半休にまつわるトラブルが起こった場合は、ぜひ労働問題を得意分野とする弁護士に相談しましょう。弁護士に相談すれば不安な点を解消でき、さまざまなサポートも受けられます。

そのような方におすすめなのが、ベンナビ弁護士保険です。
弁護士保険とは、個人的なトラブルや事業活動で発生した法的トラブルに対して、弁護士に相談した際にかかってくる費用を補償する保険サービスです。

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