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「仕事が遅い」という理由で残業代をもらえないのは妥当?

更新日:2024年01月30日
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仕事を定時で切り上げて帰る人、残業をする人…会社にはどちらの従業員もいるでしょう。
残業をする理由としては、与えられる仕事が多すぎるということもよくあるでしょう。しかし「あなたの仕事をさばくスピードが遅いから」という理由で、残業をしても残業代がもらえないということになれば、腑に落ちない部分もありますね。

本記事では残業代について詳しく解説しているので、ぜひ最後までお読みください。

残業する理由はさまざま

残業する理由はひとつではありません。
冒頭でも少し触れましたが、残業する理由としては「仕事量が多すぎる」「仕事をこなすスピードが遅い」「残業代が欲しいからあえてダラダラと仕事をする」といったものが挙げられます。

そして、どんな理由で残業をしようとも残業時間が労働時間であると認められる限り、残業代は発生します。
実際に、労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間である」と定義されています。

「会社の指揮命令に基づく残業か」がポイント

会社の指示で残業するのが残業代発生となるのであれば、他の人の残業に付き合うために残っている人や無駄に残業する人は、残業代支給の対象とならないような気もするでしょう。

実際に行政通達でも、自主的な時間外労働は労働時間にあたらないことが明確に示されています。
したがって、いわゆる付き合い残業やダラダラ残業の場合には残業代を支給しないことも法的に許されるのです。

残業の「黙示の指示」

ですが、会社からの指示はなかったにしても実際の仕事量が多すぎて残業した場合、残業代が発生しないのでしょうか。
これについては、会社側が従業員に具体的に指示した仕事が客観的に見て定時までの労働時間でこなせるものではないと認められる場合には、残業に対する暗黙の了解のもと「黙示の指示」があったと認められるため残業代はきちんと支給されます。

そうとなれば、会社側が指示して与えた仕事量が多すぎることによる残業であれ、労働者側の業務スピードの問題による残業であれ、それを会社が把握しているなら、残業代は発生します。
そもそも、労働者の能力が低いのであれば就業時間内に終わるような業務のみを与えるべきです。そのため、労働者の仕事が遅いから残業代を出さない、というのは成立しません。

ちなみに、付き合い残業やダラダラ残業にもこれまで会社がきちんと残業代を支払っていたという事実があるならこれも黙認の一種と言えるでしょう。

会社の立場から考えるとどうなる?

では、会社の立場にたってみるとどうでしょうか。
言うまでもありませんが、残業代は会社にとって経費になります。そのため、できることなら残業代を出したくないという事情はあるのです。
そこで、無駄な残業までを黙認しないためにも会社としては、残業についての方針を明確かつ的確に提示する必要があり、指示のない残業は禁止することを告知しなければなりません。

もしどうしても残業が必要と言う場合にはあらかじめ上司から了承を得る、上司の方から残業を許可・指示するといった方法を徹底していれば、付き合い残業やダラダラ残業への残業代支給を見直すことができるでしょう。

決して残業をする「権利」があるのではない

労働者は、会社の指示に従い業務を遂行する「義務」がある一方、残業をする「権利」はありません。
残業をして残業代が支給されればその分給料が増えるのはメリットとも言えますが、労働者はプライベートの充実をはかれなくなります。

とは言え、会社として残業を減らしていくには労働者だけが頑張るのではなく会社側も待遇改善などを検討する必要があります。

当然のことですが、通常の勤務時間のなかではこなせないような仕事を与えたのに残業代を支給しないといった対応は論外です。
残業に関して、よりよい方向に持っていくには会社側・労働者側双方が努力する必要があります。

申請できなかった残業代を請求するためには?

「残業は基本的にしないでください」と指示がある状況でも、どうしても仕事が終わらず申告なしで残業をしたとしましょう。
この場合、申請していない残業代は請求可能なのでしょうか。
結論から言えば、申請をしなかった残業代を請求するためには残業の事実と会社からの黙示の指示があったことを証明する必要があります。

残業をした事実を証明する

まずは、残業をした具体的事実の証明が必要です。
具体的には、下記のようなものが証拠となります。

  • タイムカード(機械的に印字されているものが好ましい)
  • 勤務時間を記した日報
  • 業務中に送信したメールの時刻(自動送信ではなく手動送信のメールが好ましい)
  • 建物の退館記録(退館時刻の証明となる)

「黙示の指示」があった証拠を提示する

次に、黙示の指示があった証拠も提示しなければなりません。
会社側の都合、労働者側の都合どちらであれ残業をしたことを会社が知っているならば残業代は支給されることになります。
黙示の指示があったことを証明する証拠としては、下記が適しています。

  • 業務内容の指示書(就業時間内には到底こなせない仕事量・内容を指示したことの証明となる)
  • 会社が業務を指示した時刻(終業直前の指示の場合、残業をせざるを得ない状況となるため)

労働トラブルの解決は弁護士に相談しよう

残業代は、理由を問わず「残業時間=労働時間」と認められる限り、発生するものです。
しかし、「残業は控えるように」と会社から指示されている場合は、残業申請をするにもできないでしょう。
もし残業代を請求しても「申請を出してない以上は支払えない」と取り合ってもらえないことも想定されます。
しかし、それで納得するのもおかしい話です。

そこで、おすすめなのが労働問題に詳しい弁護士へ相談することです。

弁護士に相談するメリットとは

残業代トラブルを弁護士に相談すれば、下記のメリットがあります。

  • 残業分として適正な金額を計算してもらえる
  • 会社への交渉も代行してもらえる
  • たとえ会社が請求への対応を無視しても、裁判手続きで残業代支給を認めてもらうように根回ししてもらえる

このように、弁護士に相談することでさまざまな恩恵を受けられるのです。

弁護士の探し方

労働トラブルが得意な弁護士を探す際は、労働問題の対応実績があるかどうかも確認しておくと良いでしょう。
弁護士はきっと、あなたの強い味方になってくれるはずです。
ただし、やはり弁護士費用の負担について気になる方も多いでしょう。
そのような方におすすめなのが、ベンナビ弁護士保険です。

弁護士保険とは、個人的なトラブルや事業活動で発生した法的トラブルに対して、弁護士に相談した際にかかってくる費用を補償する保険サービスです。
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編集部

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