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SES契約にはびこる違法行為とは?SESと派遣の違いも解説

更新日:2024年01月30日
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IT業界において、大規模なシステムを開発する際は、発注者がSE(システムエンジニア)を集めることになります。このとき、プロジェクトの規模などによっては一度に大人数のSEの手が必要となる場合があります。

自社社員だけで必要人員をまかなえない場合は、複数の下請け企業(1次下請け、2次下請け)の社員や個人事業主、派遣社員などを募ります。そして集まったメンバーで数十名〜数百名のプロジェクトチームを組むケースがあります。ここで、SES(システムエンジニアリングサービス)契約を利用すれば、スポットで必要なSEを調達できます。

そんなメリットもあるSES契約ですが、契約上の作業責任者やプロジェクト現場における指揮命令権などを契約上明確にしておかなければトラブルにも発展しかねません。

本記事では、特にIT業界でよく実施されている「SES契約」やそれにまつわる違法行為について解説します。派遣との違いも紹介しているので参考にしてください。

SES(システムエンジニアリングサービス)とは

SESとは、「システムエンジニアリングサービス」の略語で、エンジニアが仕事をする際の契約形態です。
この契約形態ではシステム開発を行う際に、クライアント企業へエンジニアを派遣します。

そして、派遣されたエンジニアはその企業に常駐して業務を提供するという形になります。

昨今のIT業界ではエンジニアが不足しているため、大規模なシステム開発では必要なエンジニアを確保できない場合もあります。そのようなときに、必要に応じて業務を委託できるSES契約は発注側にとって非常に便利です。

特に、基幹系システムや金融系システムは、開発するまでに長い時間と大きな労力が掛かります。プログラミング言語も昔の言語を利用する傾向があるので、対応できるエンジニアは少ないのが現実です。
こういった問題を解消するためにSESは発展してきました。

発注側にメリットのあるSESですが、受注側にもメリットがあります。
受注側は、「業務請負契約」により開発全体に責任を持つことはなく、必要な範囲で仕事をすれば良いため大きなリスクを負うことがありません。なお、SESは多くの場合正社員としての雇用になるので、生活の不安もなくなります。

SES契約は法律のグレーゾーンになる?派遣との違いは?

ここまで読んでくれた皆様は、「SESと派遣って、何が違うの?」と疑問に思うかもしれませんね。
実は、SESと派遣では「指揮命令権限」に違いがみられます。

SES契約の場合、指揮命令権は雇用者のSES企業にあります。一方、派遣契約では、指揮命令権は発注元が持ちます。
SESの主な契約内容はあくまでも「技術」の提供で、指示命令権はSES企業にあります。休日出勤・残業などの命令はクライアントにはできません。
一方、派遣契約では発注元企業が指示命令権を持つので、残業などの指示は発注元企業が出せます。

SES契約は、「業務委託契約」によって定義され基本的には「○○円/作業時間」という形での報酬支払い契約になります。しかし、発注者からの指示を受注側雇用のエンジニアが、直接受けてしまえば実質的には「派遣」とみなされます。
SESの提供会社は、派遣業の免許を保有していないこともあります。

それどころか、他社社員をまた別な会社に派遣する「多重派遣」が実施されている場合もあります。
労働者派遣免許を持たない場合もそうですが多重派遣がされている場合も、SE側は違法行為の被害者となってる可能性があるのです。

多重派遣は職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)と労働基準法第6条(中間搾取の排除)で禁止されています。

職業安定法第44条では「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない」と定めています。

そして、労働基準法第6条では、「何人も、法律に基いて許される場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」という内容が示されています。
このような違法行為は実際に起こっていますが、あってはいけないことであると理解してご自身が巻き込まれないように気を付けましょう。

SES契約で働く際の注意点

SES契約でご自身が働くときは下記の点に注意しましょう。

  • 完成物に対して責任がない「業務委託契約」でありながら、実際は成果物が求められている状態でないか
  • 発注元と自身の間に2社以上を挟んだ形態である「多重派遣」が実施されて不当に中間搾取されていないか
  • 発注元から直接的に指示が出されて派遣社員のようになっていないか
  • 事実上は発注元に直接的に雇用されるのと同様の労働をしていながら、賃金に差が生じていたり不当な雇い止めされていないか

意外と、上記のようなことはありがちなのでご自身で気を付けておきましょう。個々のエンジニアは会社と比べて立場が弱くなりがちです。

SE(システムエンジニア)がSES契約で契約トラブルに備えるには

個人事業主のSEはもちろんのこと、会社員のSEも契約トラブルや労働トラブルに備える必要があります。
そのためには「弁護士保険に加入して、弁護士を味方につけておく」という方法が有効です。

弁護士保険に加入しておけば、法的トラブルが発生した場合に弁護士を利用しても支払額を抑えられます。
気になる方はぜひ、ベンナビ弁護士保険をチェックしてみてください。

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編集部

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