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残業代請求をする際に心配するそのリスク、会社側の違法行為かも

更新日:2022年02月16日
残業代請求をする際に心配するそのリスク、会社側の違法行為かものアイキャッチ

 未払いの残業代を請求することは、労働者にとっては正当の権利です。にも関わらず、残業代請求を行うと、不利益を被るようなリスクが生じるのではないか、と心配する労働者は少なくありません。
 しかし、そのようなリスクは、会社側の違法行為に該当する可能性があります。

 本記事では、労働者が残業代請求をする際に心配するリスクについて、どのような違法行為に当たるのかについて深堀りしていきたいと思います。

残業代請求のリスク

 労働者が残業代請求を行う際に、心配するリスクは主に以下が挙げられます。

・報復人事
・報復的な解雇
・懲戒処分
・嫌がらせ
・損害賠償請求
・訴訟
・転職先に残業代請求をしたことをバラされる

 但し、タイトルの通り、労働者が心配するリスクは会社側の違法行為に当たる可能性があります。そのため、恐れるに足りません。法的観点から見ていきましょう。

報復人事

 報復人事は、例えば、地方の事業所や閑散部署に左遷されたり、降格・減給させられたり等が挙げられます。
 しかし、報復人事は、労働契約法第3条第5項に定められている「労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない」に違反する可能性があります。
 そのため、報復人事を行う会社は少ないと考えられます。

報復的な解雇

 残業代請求をしたことで報復的な解雇を受けるのではないか、と心配する方がいるでしょう。確かに、解雇をされるとライフラインが断たれ、生活に困るので、心配になるのも察するに余りあります。
しかし、報復的な解雇は、労働契約法第16条で定められている「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」に該当する可能性が考えられます。

 そのため、報復的な解雇が行われることは、心配に値しないと言えるのではないでしょうか。

懲戒処分

 懲戒処分は、戒告や減給等が考えられます。
しかし、懲戒処分については、労働契約法第15条で「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」と定められています。
 つまり、懲戒処分は、企業の秩序と規律を維持する目的で行われなければならないのです。

企業から支払わらない残業代を請求する行為は、労働者にとって正当な権利です。残業代請求による懲戒処分は考え難いと言えるでしょう。

嫌がらせ

 残業代請求をすると、上司からパワハラ等の嫌がらせを受けるリスクがあるのではないか、と考える労働者は少なくありません。
 嫌がらせは、業務の適正な範囲を超えて苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為です。

 残業代請求を理由にした嫌がらせは、労働安全衛生法の規定にある「事業者は、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない」に違反している可能性があるのです。

損害賠償請求

 労働者の残業代請求に対し、「業務効率が悪いから損害賠償しろ」「損害賠償請求を取り下げてほしかったら、残業代請求を取り下げろ」等、損害賠償を盾に残業代請求を取り下げようとしてくるかもしれない、と心配する方もいるでしょう。
 しかし、会社が社員に損害賠償請求をすることは、例外を除いて認められません。そのため、残業代請求に対する損害賠償請求は、認められないと言えるしょう。

訴訟を起こされる

 残業代請求を行うと、会社から訴訟を起こされるリスクがあるのではないか、と考える方がいます。
 しかし、残業代請求で訴訟を起こす会社はないと考えられます。というのも、そのような報復的な訴訟は、不法行為と見なされる可能性があるためです。
 そのため、残業代請求に対する訴訟は、杞憂と言えるでしょう。
 

転職先に残業代請求をしたことをバラされる

 転職先に残業代請求をしたことをバラされると心配する方がいます。
 しかし、その心配は無用です。というのも、会社が労働者の同意を得ずに、残業代請求をした事実を転職先に情報を流す行為は、個人情報保護法に違反する可能性があるためです。

・個人情報保護法とは
 氏名や生年月日、性別、住所等、個人情報を扱う企業・団体等に対して、適切な取り扱い方法を定めた法律のことをいいます。

 そのため、会社が労働者の転職先に残業代請求をしたことをバラすことは、考え難いのです。

専門機関への相談

 違法とはいえ、全ての会社が、以上で挙げた行為をしないとは限りません。もっともらしい理由で、報復人事や損害賠償請求等を行ってくる可能性はゼロではありません。
 もし、会社からそのような行動を起こされた場合は、専門機関に相談することをオススメします。その専門機関は、労働基準監督署、残業代請求に強い弁護士事務所の2ヶ所が挙げえられます。

労働基準監督署

 労働基準監督署は、労働条件の保障や改善、労災保険の給付などを行う機関です。会社の違法行為も監視しています。
労働者からの相談を受け付けているので、会社から報復人事等の被害を受けている方は相談してみましょう。

残業代請求に強い弁護士事務所

 弁護士の中には、残業代請求に強い弁護士がいます。残業代請求によって起きた問題は、残業代請求に強い弁護士事務所に相談するのも一手です。

終わりに

 残業代請求をすると、本記事で挙げたことを中心に様々なリスクが生じると考える労働者は少なくありません。しかし、それらのリスクは、違法行為に当たる可能性が十分に考えらえます。
ですので、そのようなリスクを考えることは取り越し苦労と言えるでしょう。一番避けたいのは、それらのリスクを恐れて、支払われるはずに残業代をもらえないことです。

 もし心配で残業代請求に踏み出せない方は、労働基準監督署や残業代請求に強い弁護士に相談をして、不安要素を取り除いてもらうのも一つの手段かもしれません。

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編集部

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