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オワハラを無視して内定を辞退したらどうなる?損害賠償も請求されるの?

更新日:2024年01月30日
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昨今の就職活動で問題となっている「オワハラ」。
オワハラとは、内定を出した学生が内定辞退をしないように「就職活動をこれで終わりにしなさい」という圧力をかけるハラスメントです。
しかし、このオワハラには従わないといけないのでしょうか。そして、会社の意向を無視して内定辞退をしたら損害賠償請求の対象になるのでしょうか。

本記事はこのことについて解説します。

オワハラは違法?

オワハラは、学生の就職活動を制限するものなので、オワハラは違法のようにも思われるでしょう。
ただし、オワハラ自体を罰する法律は存在しません。

しかしながら、学生の就職活動を妨害する行為が脅迫行為、高圧的なものとなれば脅迫罪や強要罪に問われる可能性もあります。

オワハラの具体例

次にオワハラの具体例を紹介します。
「オワハラ」という言葉は比較的新しいですが、その事例は以前からあります。
例えば内定辞退を申し出たら会社の人間に囲まれ暴言を吐かれた、人事担当者からコーヒーをかけられた、なんて例も。
現在でも就活終了しない限り内定を出さないと脅したり強要に近い慰留をするといったオワハラをするような会社もあります。

そのようなことをされたら学生は立場上、本当は内定を辞退したくてもできないこともあるでしょう。
では法的には、その時点までに内定辞退を申し出ればいいのでしょうか。

労働契約の解約と同様に考える

そもそも内定とは、法的には学生と会社との間に「効力(就労)始期付解約権留保付労働契約」が締結されている状態です。

そして、事情がある際は互いが持つ解約権を行使できます。
ですが、会社側が解約権を行使することには制約があり相当な事情がなければ内定取消しはできません。

それでは、学生が解約権を行使する場合はいかがでしょうか。
一般的に労働者が会社に対し退職の意思表示をする行為を「自主退職」や「辞職」などと呼びます。
この自主退職の意思表示は、会社が同意するとか拒否するとかとは一切関係せず会社に到達してから2週間経過すれば必ず退職の効果は発生することになっています。
この原則は、採用内定においても該当します。

会社が何を言っても、学生側からは2週間の期間をおき内定辞退の意思表示ができます。

つまり、4月1日入社の会社の場合は、3月中旬頃までに内定辞退をするのは可能なのです。

そうは言っても会社は黙っていない

法的には3月中旬の時期までは内定辞退が可能であっても、実情はいかがでしょうか。
およそ半年前の10月に内定式を終え、就職することの誓約書も書き研修を受けて社宅に住むことまで決まっているようなことも珍しくはありませんが、それで3月になって内定辞退されれば会社としても不服であることは間違いありません。

それに会社は、採用にも相当なコストをかけています。
例えば会社の広告費や通信費、人件費、研修費に交通費など、採用者1人に対して数十万から数百万円のコストが必要になるのです。
内定辞退されれば、これらがただの負債になるという結果になり、会社は学生に損害賠償を求められるようにも思えます。

会社の損害賠償請求は基本的に認められない

ただし学生が内定を辞退したからと言って、実際に会社が損害賠償請求の訴訟を起こして認められた例というのは基本的にありません。

内定辞退の判例

実例では、大学4年次の6月に内定をもらった学生が会社担当者による辛辣な研修に絶えられず3月31日に内定辞退を申し入れたものがありました。そこで、学生は会社に対し留年費用や慰謝料等の損害賠償を請求したところ反対に会社側からも採用費用118万円の損害賠償請求をされる事態へ発展しました。
裁判所は、学生の内定辞退の申請が入社日の直前となったことは、信義則上の義務に大きく違反すると言えなくもないものの、研修担当者の一連の発言が穏当でなかったことを考慮しました。

そして「内定辞退は信義則上の義務に著しく違反して行われたとまでは言い難い。学生は損害賠償責任を負うものではない。」と判断しました(X社事件・東京地裁平成24年12月28日判決)。最終的には、学生側の損害賠償請求も認められませんでした。

内定者に損害賠償請求義務が発生するのは稀

上記で示した裁判例からもわかりますが、学生に損害賠償義務が認められるのはあまりにも信義に反するような内定辞退をした場合に限定されるということです。会社側にとっても、内定辞退と損害との因果関係を証明するのは非常に困難です。

そして、損害額に対して訴訟を起こすコストが上回ることや立場の弱い学生に損害賠償請求を行うことによる企業イメージダウンのリスクがあります。そのため、実際に会社側が学生を訴えるのはあまり現実的ではありません。
学生が会社より「オワハラ」を受けた場合には、会社の側にもハラスメントをしたという負の事実があるわけです。

そのため、会社からの「損害賠償請求する」という脅しは気にしないで、はっきりと内定辞退したい旨を伝えるのが良いでしょう。

迷惑はかけないようにする

「内定辞退をするなんて言い出しづらい」

そんなことを考えながら時だけが過ぎてしまうと、会社にも迷惑をかけてしまいます。入社する意志がないのであれば、やはり早く会社にその旨を伝えなければなりません。

中小企業やベンチャー企業の社長であれば入社直前に申し出られた内定辞退に対しては激高し先のことをよく考えずに訴えに出るリスクもあります。
しかし、強いオワハラを受けていた以上、会社に内定辞退を申し出るのが恐ろしく、なかなか切り出せずに困ることもあるでしょう。

オワハラで内定辞退を申し出られないときは弁護士へ相談しよう

「オワハラをされた以上、内定辞退を申し出られない。でも、早くに申し出なくては。」
そういった悩みを抱えている方は、弁護士に相談するのも選択肢です。弁護士に相談すれば会社への交渉を代行してくれます。

また、弁護士であれば企業からのオワハラが法的に問題があるかどうかも専門家の立場から判断してくれます。

しかし、やはり弁護士費用の負担が心に引っ掛かる方も多いでしょう。
そのような方におすすめなのが、ベンナビ弁護士保険です。
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編集部

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