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退職願と退職届の違いって?どちらを出せば良いの?

更新日:2024年01月30日
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「今の会社をやめたい」

退職を考えるようになると、退職届のことも頭によぎるでしょう。
そして、本気で退職するつもりがあるなら「退職届をさっさと出してしまいたい」と言う気持ちにもなります。

ですが、ここは冷静になることも大切です。それ、本当に「退職届」でいいのでしょうか?
本記事では、退職届と退職願の違いなどについて解説します。

労働契約の終了方法は3種

そもそもの話ですが、退職願と退職届は似ているようで異なるものです。そこでまずは退職(労働契約の終了)のパターンを把握しましょう。
定年退職や契約期間の満了、本人の死亡といったケース以外では、必ず労働者もしくは雇用する側のどちらかの意思で労働契約を終了します。
退職のパターンは、下記の3つに分類されます。

自主退職(労働者による解約)

労働者が自発的に退職の意思表示をするのを「自主退職」や「辞職」といいます。

合意解約(合意による解約)

労働者と会社の合意のうえで労働契約を終了することです。

解雇(使用者による解約)

会社から一方的に退職をするように勧告されることです。
「退職届」は労働者側の一方的な意思表示なので自主退職に該当します。そして、退職「願」は、労働者から退職に合意することを依頼しているため合意解約にあたります。
解雇は会社からの一方的な意思表示であるため、「退職願」も「退職届」も関係ありません。

辞表と退職願、退職届の違いは?

退職届や退職願のことを俗に「辞表」と呼ぶ場合もありますが、正しくは、会社の役員や公務員の場合に用いるものです。労働者の場合は基本的に使う単語ではありません。

また、自主退職と合意解約ともに、紙を出さずに口頭で行っても成立します。
しかし、会社所定のフォーマットを利用して提出するか自作の書類を出すのが一般的です。
そのような実態を見れば、単なるビジネスマナーとも言えますね。
では一度話を戻して、自主退職と合意解約の違いについて検討してみましょう。

自主退職と合意解約の違いは

労働者が自主退職の意思表示を行った場合、すなわち退職「届」を会社に提出した場合は会社の代表者もしくは人事部長など権限を持つ人に到達した時点から効力が発生します。
「効力が発生する」というのは、その時点で撤回ができなくなるということです。
そして、民法の規定によって原則として意思表示から2週間で辞職の効果が発生します(民法627条1項)。
そのため、会社側が退職を認めようとしないときも2週間経過すれば従業員は退職できるのです。

もし、勤めている会社が退職を阻止しようとしてくることが想定されるのであれば、退職届を提出することで比較的スムーズに退職できるでしょう。

一方、労働者が合意解約の意思表示を行い退職「願」を提出した場合については、会社の代表者・人事部長など権限のある人がそれに合意した時点での効力発生となります。
したがって、退職願を提出することは合意解約の「申請」にしか過ぎません。

会社の責任者の承諾によって合意解約が「成立」するまでは、労働者は合意解約の意思をキャンセルできるのです。
「円満退職をしたい」と考えるのであれば、退職願を提出するのが良いでしょう。

これらの違いを簡潔に表現するならば、自主退職は「会社の事情なんて関係なく、私は何が何でも会社を辞める」という強い思いがある一方で、合意解約は「会社もOKを出してくれるなら辞めよう」という円満な姿勢がみられるということです。
実際に裁判例でも、「使用者の態度如何に関わらず確定的に雇用契約を終了させる旨の意思表示が客観的に明らかである場合に限り」自主退職の意思表示と考えるべきとされています。

なお、退職の意思は確かであるものの円満退職を狙って一旦退職届を提出したが、会社の引き留め行為から解放されないという場合でも、2週間経てば上の自主退職と同様の効力が発生します。
これらは、どちらも雇用保険上の「自己都合退職」に該当するため、基本給付を受給するまでは3か月の待機が必要です。

退職願と退職届の書き方

これまでにも説明したように、退職願と退職届どちらを提出すべきかは状況によります。
後悔のないように、自分はどちらを出すべきか一度冷静に考えてみましょう。
では、ここで退職届・退職願を書くときに必要なものをリストアップします。

  • 退職願もしくは退職届の用紙…会社指定のフォーマットを利用
    (※会社の指定フォーマットがなければ、自作する)
  • 封筒…白色無地・二重構造・郵便番号枠なしのもの
  • 筆記用具…ボールペンもしくは黒の万年筆
  • 認印

退職願の書き方

まずは退職願の書き方について説明します。

一行目には「退職願」と記載しましょう。
退職理由については、具体的に記載する必要がありません。ここは「一身上の都合により」と書くのが一般的です。
そして、二行目の最下部には、「私儀」と記載します。
これは、「わたくしごとではありますが」という意味になります。

次に、本文の退職日は会社と協議して決めた年月日を記入します。また、退職願の末尾は「退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。」と記載してください。
その後は、退職願を提出する年月日を記載のうえ、署名捺印します。
最後は、社名と代表取締役社長の氏名を記載しましょう。
もし書類作成中に書き損じが生じた場合は、はじめから書き直す必要があります。

くれぐれも修正テープなどを使って書き直すことは控えてください。

退職届の書き方

次に、退職届の書き方です。
実は、退職届の内容は退職願と大差ありません。
異なるのは本文の末尾を「退職いたします」にすることです。
それ以外の点は、退職願の書き方を習ってください。

封筒のルール

また、封筒にもルールがあります。
封筒には退職願もしくは退職届を三つ折りにして入れるのが基本となります。
封筒の表には「退職願」もしくは「退職届」、裏書には所属する部署・課と氏名を記載します。

茶封筒はマナー違反になります。必ず白色無地のものを使用しましょう。

「こんな会社辞めてやる!」と言ったらどうなる?

退職届や退職願を出すということは、それだけ労働者の退職に対する意思が固まっているということです。

しかし、こんなケースはいかがでしょうか。
例えば、上司の言動にストレスを溜めている従業員が突然限界に達し「もう、こんな会社辞めてやる!」 と大声で言った場合です。
これは退職の意思表示、合意解約の申込みとどちらにも捉えることもできますが、このようにどちらのなのか曖昧な場合は「合意解約の申込み」にあたると考えられます。

理由としてはこれを自主退職とすれば撤回ができなくなり取り返しのつかない状況となるからです。
そこで、権限を持つ責任者が退職を承諾するまでは意思表示を撤回できる「合意解約」の申込みと解釈した方が慎重に取り扱えるのです。
労働者側も一時的な感情で「会社を辞めてやる!」と言った場合、本当は辞めるつもりなんてないということも普通にあります。

こういったケースはただの喧嘩と見なされ、労働者側に自主退職や合意解約の申込みをするつもりはないため退職の効力自体発生しません。
ただし、一度「こんな会社辞めてやる!」と言ってしまったら、人間関係にヒビが入りかねません。
本当に辞めるつもりがないなら、そのような発言は辞めておくのが無難です。

会社側から退職の提案があった場合は

先述したように、合意解約は「労働者と会社が合意して労働契約を終了すること」です。
労働者側からの合意解約の申込みに関しては説明した通りですが反対に、会社側から合意解約の申込みをし、労働者がそれに合意するという退職方法もあります。

これは「退職勧奨」と呼ばれ、「申込み」にしか過ぎないので、労働者が承諾しなければ効力は発生しません(具体的には、使用者の求めに応じ退職届(願)を提出する場合が多くみられます)。

ですが、会社からのかけられる圧力は強いものです。
労働者は圧力に促されて合意せざるを得ないケースが多いでしょう。
そして、これは事実上の解雇とも言えます。

退職勧奨による合意解約は、雇用保険上は解雇と見なされて「会社都合退職」になります。したがって、自己都合退職の場合とは異なり3か月待たなくても基本手当が支給されます。
このように基本手当の支給における違いがあることから、合意退職のなかでも退職勧奨は特に区別される必要があります。

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