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フレックスタイム制の残業代計算方法:清算期間と総所定労働時間を把握しよう

更新日:2022年03月16日
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 労働者が出退勤時間を決められるフレックスタイム制は、労働者の判断で労働時間を決定できるため、フレキシブルな労働が求められる情報通信業で採用される傾向にあります。

しかし、その性質上、どこからが残業に該当するのか不透明になりやすく、労働者の目を欺き、不当に残業代の支払いを免れる企業が少なくありません。

 そこで本記事では、フレックスタイム制の残業時間に当たるケースに触れながら、残業代の計算方法について説明していきたいと思います。

清算期間と総所定労働時間

 フレックスタイム制の残業代を計算する際、「清算期間」と「総所定労働時間」の把握が不可欠です。
「清算期間」と「総所定労働時間」は、労使間(労働者と会社の間)で決定しなければならない、と法律で定められています。

清算期間

 清算期間とは、何のことを指すのでしょうか。
フレックスタイム制では、日によって労働時間が変動するので、1日当たりの労働時間が一定ではありません。そのため、1日単位での所定労働時間(事前に決められた労働時間)の設定が困難です。
そのため、フレックスタイム制の場合、1週あるいは1ヶ月の期間で所定労働時間の設定を行います。その期間のことを清算期間と呼びます。

 清算期間は最長で3ヶ月まで認められています。

総所定労働時間

 総所定労働時間とは、清算期間における所定労働時間のことを指します。総所定労働時間は、下記のように法定労働時間(労働基準法で定められた労働時間の限度)が定められています。

清算期間 一般事業場 特例措置対象事業場
1週 40時間 44時間
1ヶ月 28日の場合 160.0時間 176.0時間
29日の場合 165.7時間 182.2時間
30日の場合 171.4時間 188.5時間
31日の場合 177.1時間 194.8時間

特例措置対象事業場とは、以下のような業種で常時労働者の人数が10名未満の事業所のことを指します。

業種 主な内容
商業 卸売業・小売・不動産管理・出版等の商業
映画・演劇業 映画の映写・演劇等の興業
保険・衛生業 病院・診療所・保育園・老人ホーム等の社会福祉施設
接客・娯楽業 旅館・飲食店・理容室・遊園地等の接客娯楽

フレックスタイム制の残業代の計算方法

 清算期間と総所定労働時間を把握したら、残業代を計算していきましょう。残業代は以下の計算式で算出します。

残業代=「①残業時間」×「②1時間当たりの基礎賃金」×「③割増率」

 「①残業時間」「②1時間当たりの基礎賃金」「③割増率」をひとつずつ見ていきましょう。

①残業時間

 フレックスタイム制の残業時間は、どのような時間のことを指すのでしょうか。 以下のケースが残業時間に該当します。


・実働時間が総所定労働時間を超えた労働
・1ヶ月の労働時間を週平均で算出した際、50時間を超えた時間分(清算期間が1ヶ月を超えている場合に限る)

実労働時間が総所定労働時間に満たない場合

 対して、実労働時間が総所定労働時間に満たなかった場合、その時間分の賃金がカット、もしくは翌月に繰り越される対象になります。但し、繰り越される場合、翌月の総所定労働時間は法定労働時間内に納めなければなりません。

②1時間当たりの基礎賃金

 1時間当たりの基礎賃金とは、いわゆる時給のことを指します。しかし、正社員等の方は、時給換算されていないため、1時間当たりの賃金を把握していないでしょう。
 そこで、以下の計算式で、1時間当たりの賃金を計算していきます。

1時間あたりの基礎賃金=基本給÷[(365日-年間所定休日)×1日の所定労働時間]÷12ヶ月

※うるう年の場合は、以下の計算式で算出する
1時間あたりの基礎賃金=基本給÷[(366日-年間所定休日)×1日の所定労働時間]÷12ヶ月

 基本給は、月給から手当を差し引いた額のことを指します。
 また、年間所定休日とは、1週間に定める休日の他に、ゴールデンウイークやお盆休み、年末年始休み等の長期休暇、国民の休日といったような、企業が定めた休日日数のことを指します。

基本給と年間所定休日は、こちらの記事「正しい残業代の計算方法:わかりやすく解説」で詳しく説明をしています。併せてご覧ください。

③割増率

 割増率は、以下の表のとおり残業の性質によって異なります。

残業の性質 割増率
法定労働時間内の残業 0%
法定労働時間外の残業 25%
深夜残業(22~翌5時の残業) 50%
休日残業 50%
休日の深夜残業 60%

 「法定労働時間内の残業」とは、総所定労働時間を超えているが、法定労働時間は超えていない残業のことを指します。総所定労働時間が、法定労働時間を下回って設定されていると、「法定労働時間内の残業」は発生します。
 例えば、以下の条件のAさんがいるとします。

・清算期間:2021年3月1日から1ヶ月
・総所定労働時間:160時間
・実働時間:180時間

 3月は31日あるため、法定労働時間は177.1時間です。そのため、「法定労働時間内の残業」は、

177.1時間-160時間=17.1時間

です。対して、「法定労働時間外の残業」は、

180時間―177.1時間=2.9時間

になります。

 また、「法定労働時間外の残業」とは、総所定労働時間を超えていて、かつ、法定労働時間を超えている残業のことを指します。総所定労働時間を法定労働時間で設定している場合は、全ての残業が「法定労働時間外の残業」に該当します。

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