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過労死ラインは1ヶ月の残業が80時間?100時間?その基準の根拠とは

更新日:2024年03月19日
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みなさんは2015年12月に某広告代理店の女性社員が過労自殺した事件を覚えていますでしょうか?この女性社員は1ヶ月で105時間もの残業をさせられていました。
これは、過労死ラインを超えていることになり、当時のSNSでは、同じような労働環境下で働いている人からの投稿が相次ぎました。

そのことによって、過労死ラインを超えて働くことは決して珍しくないことが世間に知れ渡りました。
そこで、今回は過労死ラインについて説明していきます。

過労死ラインとは

過労死ラインとは、長時間の残業によって健康障害が起こりやすくなる残業時間数のことを指します。

長時間労働による健康障害は、主に脳と心臓に症状が出ます。また、仕事へのプレッシャーやパワハラ等も重なり精神疾患から自殺をしてしまう人もいます。さらに、睡眠不足、過労により居眠り運転・風呂場での事故死等も健康障害に含まれます。

過労死ラインと労災認定

 なぜ過労死ラインは設けられるようになったのでしょうか。それは、労災認定が大きく関係しています。

■労災認定とは

仕事中に病気や怪我をした時、本人や遺族の請求に基づいて、仕事が原因でそうなったものかどうかを労働基準監督署が客観的に判断します。

判断が認められると療養補償(会社から必要な療養費用として受ける補償)などが給付されます。過労の場合は、労働時間やストレスの度合いなどで総合的に評価されます。

労災認定されるためには「病気になった原因」を明らかにしなければなりません。
 ですが、病気は労働環境だけでなく食生活等の生活習慣も複雑に関わってるため、原因を立証するのは難しいのです。
特に2000年より以前は、劣悪な労働環境が健康障害を引き起こしたとしても、長時間労働が原因である客観的根拠を立証するのが難しかったため、労災認定が下りにくかったです。

そんな中、2001年に厚生労働省が「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準について」という通達を公表し、脳卒中や心臓病が仕事と関連していたかどうかを判断する目安を示しました。

 これにより、長時間労働が原因による労災認定が下りやすくなったのです。

過労死ラインの認定基準

 この通達では、健康障害の危険性が高まる基準を下記①②のような内容で明記されています。
 
①健康障害の発症前の1ヶ月間あるいは6ヶ月間に渡って、1ヶ月あたり45時間を超える残業をすると、「健康障害の発症」と「仕事」の関連性が徐々に強まると評価出来る

②以下の⑴⑵の場合、「健康障害の発症」と「仕事」の関連性が強いと評価出来る
⑴健康障害の発症前の1ヶ月間に100時間を超える残業をしていた
⑵健康障害の発症前の2~6ヶ月の間に平均80時間を超える残業をした

 上記2つの基準のうち、①を基に策定されたのが36協定です。そして②が本題である過労死ラインの認定基準になります。
 過労死ラインの条件を満たした健康障害の場合、労働と仕事の因果関係が強いとして労災認定が下りやすくなるのです。

 但し、その判断基準はあくまでも「目安」です。というのも同じ残業時間でも、労働環境によって身体への影響が変わるためです。

過労死ラインの根拠

 ではなぜ、先述の②を過労死ラインに定めたのでしょうか。
 同通達に作成に際して基となった「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書」によると、次の①②を根拠にして過労死ラインを定めたと記されています。

①富山医科薬科大学(現・富山大学医学部)が1998年に発表した研究で、1日7~10時間労働していた人より、1日11時間以上働いていた人の方が心筋梗塞を発症するリスクが2.9倍になることが分かった。

②睡眠時間と病気のリスクを調べた研究では、1日の睡眠が6時間未満では狭心症や心筋梗塞にかかる人が多くなり、5時間未満ではその傾向は顕著だった

 残業が長くなれば、その分睡眠時間が削られます。報告書によると月に80時間の残業、つまり1日平均4時間の残業をすると、睡眠時間も6時間未満になると考えられる、といった内容が明記されていました。

過労死ラインは60時間にするべきという声

 既述の残業時間を過労死ラインに設定していますが、「60時間にすべき」という声も上がっています。
その声は、2008年に1ヶ月50~60時間の残業をしていた女性看護師がくも膜下出血で亡くなった事件が発端になっています。その女性は過労死ラインを超えていないにも関わらず、過重労働による過労死の認定が下りました。

 その事件だけでなく、他にも1ヶ月65時間の残業で自殺する等、過労死と捉えられる事件が相次いでいます。

 それらの事件を踏まえ、政府は2020年までに「労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下とする」という数値目標を立てています。
「働き方改革」が施行される理由の1つに、この数値目標の達成が挙げられるのかもしれません。

過労死ラインを超えた某広告代理店女性社員の場合

それでは、冒頭で触れた過労自殺した某広告代理店の女性社員の場合はどうだったのでしょうか。
彼女の場合は、休日出勤をしているうえ、1日の労働時間が12~13時間にまで及んでいました。さらに、亡くなる1ヶ月前にいたっては朝の4~5時台に帰宅する生活を送り、1日20時間も会社にいたそうです。

その結果、105時間もの残業をしていたため、このケースは労災認定されました。

過労自殺は日本特有の悪習

この事件で明らかになったように、過労自殺は多発しています。2009年の過労自殺の件数をデータにしたものが以下です。

若年層・過労自殺

20~49歳を中心に過労自殺が多発しています。
一方、海外でも残業はありますが、比較すると日本は過労死が多い国です。それを象徴するかのように、過労死は英語で「karoshi」といいます。これは働き過ぎて死ぬということが日本特有の悪習であることを表しているといえるでしょう。

過労死ラインに残る課題

 過労死ラインについては、未だに課題が残っています、特に、教員と医師は残業時間が著しく長いのです。

教員の残業

 教員の残業は課題が山積みです。
2017年3月にまとめられた「働き方改革実行計画」で、残業時間の上限を「月45時間、年間360時間」とする原則に決めましたが、これに公立学校の教員は含まれていいません。

 えてして、教員の残業時間はより長くなっています。同年4月に文部科学省が発表した「教員勤務実態調査」のよると、中学教員の1週間あたりの平均勤務時間は63時間18分で、10年前の同調査に比べ5時間12分も増加しています。
 残業時間にフォーカスと、過労死ラインの達する週20時間以上の残業をしていた教員が6割近くを占めているという結果が出ています。
公立学校の教員の残業時間削減は急務にも関わらず、対策が講じられていないのが現状です。

医師の残業

 医師は人の命を守る仕事の特殊性から、残業時間については例外的に一般労働者より緩い規制が設けられていました。
 そこで、2019年3月に開かれた、医師の働き方改革を議論する有識者討論会で残業時間の上限を最大で「年1860時間(月155時間相当)」とする報告書が示されました。
 しかしその規制では事実上、過労死ラインの約2倍の残業を容認しているため、労働組合等からは強い反発が起きています。

過労死ラインを超えないために労働者が出来る対策

 健康障害が生じていない方でも、過重労働を続けているといずれ身体に影響が出てくる可能性があります。健康障害が起きる前に、何かしらの対策をしておいた方がよいでしょう。
 ここからは過労死ラインを超えないために、労働者が出来る対策をお伝えします。

【対策①】成果にフォーカスする

 成果にフォーカスして労働することも残業時間を減らす対策になります。
 会社が持続的な経営を可能にするためには、利益の計上が必至です。会社が従業員に求めているものは「労働時間」ではなく利益を上げるための「成果」なのです。例え残業をしなくても成果さえ出していれば、会社に不満を抱かれることはないと考えらえます。

 ですので、成果にフォーカスした仕事をすると残業時間の削減に繋がるのです。

【対策②】労働基準監督署に報告する

 労働基準監督署に長時間の残業をしている事実を報告すると、従業員の残業時間を減らすよう、会社が指導される可能性があります。
 但し、残業時間が恒常的に1ヶ月間45時間を超えている場合のみ報告をしましょう。残業時間が1ヶ月間で45時間を超えると違法の可能性があるためです。

 その時間を超えていないにも関わらず報告をすると、指導してもらえない可能性があります。

【対策③】未払いの残業代を請求する

 長時間労働が蔓延る会社では、経費を削減する一環として、従業員にサービス残業を強いり、残業代の支払いから免れているケースがあります。
 そもそも、それは違法に当たります。そこで、未払いになっている残業代の支払いを求めて悪習を正すようにすると、未払いの残業代が回収出来るだけでなく、会社が従業員の残業を制限させようとするでしょう。

 ですので、未払い残業代の請求は残業時間の削減にも繋がる可能性があります。残業時間の請求方法についてはこちらの記事「荒波を立てずに残業代を請求する方法」に明記しているので、併せてご覧ください。

【対策④】残業問題に詳しい弁護士に相談

 残業問題に詳しい弁護士の相談するのも一手です。相談をすればベストな解決策や改善案を提示してくれるでしょう。残業問題に関する初回相談は無料としている法律事務所も多々あります。自分の健康を維持するためにも弁護士に相談をすることは良策と言えるでしょう。

残業代に関する困りごとは弁護士へ相談を

過労死ラインは、働くうえで健康障害を発症した際の基準となる時間です。しかし、あくまでも大切なことは、長時間労働をせずにワークライフバランスを心かけることです。

もし、不当な扱いで残業代が未払いである際は、残業代の請求を検討してみてください。

そこで頼りになるのが「弁護士」の存在です。

法律のプロである弁護士なら、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、労働上で起きやすいトラブルを未然に防いでくれます。

労働トラブルに詳しい弁護士に相談し、自分の身を守りましょう。

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