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生理休暇の法律的な扱いは?給料や日数上限について解説

更新日:2024年01月30日
生理休暇の法律的な扱いは?給料や日数上限について解説のアイキャッチ

働く女性の権利である「生理休暇」。

しかし、生理休暇を取得した場合、有給なのかそれとも無給なのか。そして取得できる日数に上限はあるのか、といったことは案外知られていません。
本記事では生理休暇について詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。

会社が生理休暇を取得させてくれない!これって違法?

生理休暇は、労働基準法68条にて明確に定められている休暇です。
条文の引用は、下記になります。

使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。

もし、会社がこの定めに違反した際は、30万円以下の罰金に処せられます(労働基準法120条1項)。
しかし、大前提として生理であれば無条件に休暇を取得できるわけではありません。

条文にもあるように「就業が著しく困難」というのが条件になるのです。すなわち、「体調が悪すぎて仕事ができない」という状態に限り休むことが可能です。

診断書を求められたら?

それではこの「就業が著しく困難」といった状態については、診断書等の客観的な書類で証明しなければならないのでしょうか。

実は、そんなことはありません。
病院でもらった診断書等のように客観的な事実に基づく証明までは必要とされないのです。
仕事ができないほどのつらさと言っても、実際は個人により不調の度合いは異なります。それに、診断書を求めるとなればわざわざ病院に行くことが必要になり、「仕事ができないほど辛いから休む」といった制度の主旨が守られなくなります。

そのため、生理休暇取得にあたっては本人からの申請のみで通ることになります。

生理休暇取得日は無給になる?

通常の年次有給休暇については、労基法39条6項で「通常の賃金を支払わなければならない」と規定されています。
ですが、生理休暇に関する労基法68条の規定には、そういった文言は記載されていませんね。
したがって、労基法は、「生理休暇が有給であること」を補償していません。

しかし会社によっては有給になる場合もあります。

労働基準法と就業規則が異なる場合には、どちらが適用される?

基本的に、労基法と就業規則の内容が異なる際はどちらが適用となるのでしょうか。それは、「有利な方を適用する」
ということになっています。
就業規則は会社の最低基準ですが労基法は日本全体の最低基準です。

そして、就業規則で労基法に反する労働条件は規定できません。
生理休暇について労基法が有利な場合を検討すると、就業規則で「女子従業員に対する生理休暇は、これを与えない」などと規定される場合がそれにあたります。

ただしすでに説明しているように、生理休暇は労基法で規定される休暇です。この就業規則の条項は労基法違反となるため就業規則のこの部分は無効となり労基法の基準が適用されます。
反対に、就業規則が有利となるケースとしては労働契約や就業規則などで生理休暇を有給とする場合です。

会社はこの定めに従うこととなるので労基法が有給だと言ってなくても従業員が生理休暇を取得した日に無給扱いとすることは不可能です。

取得できる日数の上限は?

次は、生理休暇を取得できる上限についてです。
例えばの話、従業員が決して仕事ができないほど体調が悪いわけでもないのに生理休暇をたくさん取得したら会社側にとっては支障が出るでしょう。
そのような事態を防ぐために、1カ月あたりの生理休暇の上限日数を設けることは許されるのでしょうか。
答えは、「許されない」です。
これも、生理が本当につらい人にとっては必要な期間休むことが欠かせないので上限を設けてしまえば生理休暇の意味が薄れてしまいます。
そのため会社は生理休暇の日数に上限をつけることはできませんが、かといってずる休みまで容認せざるを得ないということもありません。

例えば、生理休暇を「月〇日までは有給、それ以外は無給」といった規定を設けて、ずる休みを予防することは可能です。

パートタイマーにも適用されるの?

では、パート従業員として働く人にも生理休暇は適用されるのでしょうか?
先述したように労基法の規定はどんな労働者にも適用されるため、パートタイマーにも適用されます。
ですが、シフト制により出勤日が決まっていると、急に休むとなれば代わりの人に代理で仕事をしてもらうことになるため生理休暇を取りにくいのが実情です。
会社によっては、急に休むこととなった場合は病欠でも「自身が代わりに働いてくれる人を探す」というルールが設けられていることもあります。
ただ、本来これは法的に問題のあるルールとなります。

休む従業員へ「代わりに働く人を探すように」と命令することは決して適切ではありません。
本来、労務管理は会社がやるべきことです。
そしてその負担を従業員へ背負わせるのは「業務命令権の濫用」でもあります。
ただ、そういったルールが設けられている以上、従わざるを得なくなるのが現実的なのであらかじめ生理日は希望シフトから外しておくといった対応をする人もいます。

生理休暇をめぐる裁判例

生理休暇は、条文上「就業させてはならない」としか決まっていません。

そこで、生理休暇を取得したことでその他の労働条件に不利益な影響が及ぶ取扱いが裁判上の争点になることがよくあります。
著名な裁判例2つを下記に紹介します。

「エヌ・ビー・シー工業事件」

会社によっては従業員の無遅刻無欠勤を促すことを目的として、精勤手当・皆勤手当という手当を設けている場合もあります。
これは、生理休暇をとったことにより精皆勤手当が減額されたことを争った事例です。

この裁判で裁判所は、「精皆勤手当が出勤率の向上のために設けられたものであること」「生理休暇をとった場合の手当が他に支給されていること」から生理休暇の取得を著しく抑制しているとは言えないとし労基法上違法な取扱いに該当しないと判断しました(エヌ・ビー・シー工業事件・最高裁昭和60年7月16日判決)。

「日本シエーリング事件」

二つ目の例です。
前年稼働率が8割以下の労働者を賃上げの対象から除外する条項がある会社にて生理休暇、産前産後休業や労災での休業などの労基法上の休暇や、組合活動による休業も全部含めて稼働率を算定したことに対して争った事がありました。

この条項は法律が労働者に権利を保障した主旨を実質的に失わせるため、これらの法律上の権利行使による休暇・休業を稼働率算定の基礎に含めることは無効と判断されました(日本シエーリング事件・最高裁平成元年14月24日判決)
一つ目の事例として紹介したエヌ・ビー・シー工業事件は、精皆勤手当の判断において生理休暇を不利に取り扱っても良いとは言っても、生理休暇日に別の手当が出ることで労働者の不利益が少ないという事実が、判断の重要な要素になっていると考えられます。
そして、一部の労働者が生理休暇を不適切にとっていた、という裏事情も結論に影響を与えていると考えられます。

基本的には、生理休暇を取得して不利益が発生してしまうと生理休暇の取得を抑制する要因になり得るので、生理休暇を労働条件に反映させるのは良くないと考えた方がいいでしょう。

生理休暇中に出掛けて懲戒解雇になった例も

休養に専念すべき生理休暇取得日に外へ出掛けて懲戒解雇となった例もあります。
ある日生理休暇をとっていた従業員は自身の夫と深夜に高速道路で4時間掛かる遠隔地まで出掛け、その翌日に民謡大会に出場していた事実が判明したことにより懲戒処分を受けました。

本事例では裁判所は、生理休暇取得日に入っていた業務はさほど苦痛ではないものも含まれていたため生理で「就業が著しく困難」であったとは判断できないという結論を出しました。そして、懲戒処分は有効であるとされました(岩手県交通事件・盛岡地裁一関支部平成8年4月17日判決)。

生理休暇を取得する際のポイント

生理休暇は法定休暇であるとは言えいざ申請するとなれば不安も生じるでしょう。
では、実際に生理休暇を取得する際のポイントを紹介します。

取得したい旨をはっきりと伝える

生理休暇は、誰にでも与えられる権利です。
体調が悪く就業困難であれば、生理休暇を取得したい旨をはっきりと会社に伝えましょう。
しかし、男性上司には「切り出しづらい」「きっと理解してくれない」といった迷いもあるでしょう。

申請する際は、なるべく女性の上司や理解を示してくれそうな人へ相談しましょう。

有給休暇の日数についても考える

生理休暇が有給休暇へ影響するかは会社次第です。
労基法では、「有給休暇は出勤日数が8割以上に満たなければ取得できない」と規定されています。

生理休暇を取り過ぎたことで出勤日数が減ってしまった場合、有給休暇に影響するリスクも頭に入れておきましょう。

生理休暇日はきちんと休む

生理休暇を取った以上はきちんと休みましょう。
もし生理休暇を取得した日に遊びに行くようなことをすれば、会社から休暇の不正利用だと見なされても仕方ありません。

一人でもこのような不正利用をすれば、他の従業員にも大迷惑をかけるでしょう。また、会社からの信用を失います。

先ほどは懲戒解雇になった事例を紹介しましたが、このようなこともあることを忘れてはなりません。

会社も労働者も、正しい権利意識を持つ

生理休暇を「申請」されれば認めることになる環境の中で「就業が著しく困難」ではないのに生理休暇を取得する事態が起こればどうなるでしょうか。

そうなれば、女性労働者への社会からの信頼が失われることになり会社側も生理休暇制度の運用が困難になることは確かです。
そのため、会社も労働者も双方が気持ちよく生理休暇を取得できるようにしなければなりません。

生理休暇申請で不当な対応をされたら弁護士に相談しよう

生理休暇申請は法定休暇です。
必要であれば無理に働かず休暇を取って休むことが大切です。

しかし「生理休暇を申請したが上司が認めてくれない」「生理休暇を取得したら、解雇された」など不当な対応をされた場合はどうすればよいか途方に暮れるでしょう。
本来であれば会社は生理休暇申請を断ることができません。また、取得したことで不当な対応をすれば違法になる可能性だってあります。

このようなケースは法律も関わってくるので、一人で闘わず弁護士に相談してサポートを受けるのが適切です。

しかし、やはり弁護士費用の負担が心に引っ掛かる方も多いでしょう。
そのような方におすすめなのが、ベンナビ弁護士保険です。

弁護士保険とは、個人的なトラブルや事業活動で発生した法的トラブルに対して、弁護士に相談した際にかかってくる費用を補償する保険サービスです。

通常であれば弁護士を利用してトラブルの解決を試みると、数十万から数百万単位もの高額な費用が必要になります。
しかし、弁護士保険に加入しておけば、法的トラブルが発生した場合に弁護士を利用しても支払額を抑えられます。
気になる方はぜひ、ベンナビ弁護士保険をチェックしてみてください。

労務問題に強い弁護士をお探しの方は以下から検索ください。弁護士保険を利用してこちらの弁護士へ相談することも可能です。

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