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会社の遅刻による罰則規定で減給はどこまで許されるの?

更新日:2024年01月30日
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起床して準備して会社に行く。

いつもの流れであっても、何かしらの原因で出勤時間に間に合わず遅刻してしまうことはあるでしょう。

しかし、従業員が遅刻するとその分始業も遅れてしまうので周りに迷惑をかけてしまいます。
本記事では、遅刻と罰金について解説します。

よくある遅刻による罰則規定

会社に遅刻した場合のよくある罰則規定では、「〇回遅刻したら、欠勤1回としてみなす」というのがみられます。
遅刻回数は、2回3回などの例がありますが、実際このような制度は許容されるのでしょうか。

下記、例をあげて考えてみましょう。
A社の社員であるBさんの労働条件は、月20日の8時間労働で月給は16万円です。
A社の就業規則では「3回遅刻したら欠勤1回とみなす」という規定があります。

ある月、Bさんは忘れ物、二日酔い、寝坊にて1時間ずつ3回会社に遅刻しました。
そこで、A社の就業規則にならい、給料から1日分の給料である8000円が引かれました。

ノーワーク・ノーペイの原則とは

Bさんが遅刻したことにより、その月の給料が8000円引かれたのはどう捉えられるのでしょうか。
労働法の世界では、「ノーワーク・ノーペイ」という言葉が存在します。
これは「働かずして給料なし」という労働法の原則です。

実際に今月のBさんは、会社に対して3時間分の労働を提供していない状態です。
これをノーワーク・ノーペイの原則で考えれば、「3時間分の労働なくして3時間分の給料なし」となります。
Bさんは1日あたり8000円の労働条件で仕事をしており、1時間あたりの給料は1000円となります。

したがって、ノーワーク・ノーペイの原則から導かれる給料の差引額は本来は3000円です。

しかし、こういった減給の処分が可能なのは、就業規則に「遅刻した場合にはその時間の給料を差し引く」という内容があるときに限ります。

ノーワーク・ノーペイを超えた差し引き

Bさんは3000円分の労働を提供していない状態ですが、A社の就業規則により、給料から8000円も差し引かれました。
一見すると「これは違法なのでは?」と思うかもしれませんね。

ところで、ノーワーク・ノーペイの原則とは別に、ペナルティとしての減給という考え方もあるのです。
懲戒としての減給に関しては、労基法91条に設けられているため条文を確認しましょう。

就業規則で労働者に対し減給の制裁を設ける場合、その減給は1回の(減給)額が平均賃金の1日分の半額を超え、(1ヶ月の減給の)総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。

※()の箇所は、こちらでわかりやすいように加筆したものとなります。

これをBさんの給料で検討しましょう。
平均賃金の1日分の半額になるのは、8000円×1/2=4000円です。
また、「1賃金支払期における賃金の総額の10分の1」とは、16万円×1/10=1万6000円です。

そのため、Bさんに対する労基法に従った減給の限度額は、1回あたり4000円、1か月あたり1万6000円となります。
1回あたり4000円まで減給可能である点を考慮すれば、Bさんが3回遅刻した際の減給は1万2000円まで可能です。
これらからすれば、Bさんに対する8000円の減給は可能という結論となります。

ただし、A社の就業規則では、「遅刻3回で欠勤1回とみなす」という条項が設けられています。

これは、遅刻を3回したことで罰を1回与えることになるので、遅刻3回で1日分の給料を差し引くのは労基法91条の違反となるのです。
したがって、A社の就業規則の「遅刻3回で欠勤1回とみなす」という条項は無効となります(しかし、このような解釈には争いもあります)。

手当や査定へはどう影響する?

では、「皆勤手当」「精勤手当」のような出勤率により支給される手当を、遅刻で差し引くのは、ノーワーク・ノーペイの原則や労基法91条に違反しないのでしょうか。
こういった手当は通常の給料とは別物として支給されるので、どういった条件で支給されるのかは会社が自由に決められます。

これらの手当に関しては、会社が労働者の無遅刻無欠勤を奨励・実現させるために支給しているので、その要件に満たない労働者へ手当を支給しないことは、ノーワーク・ノーペイの原則・労基法91条へは違反しないことになります。

それに、査定により遅刻を昇給やボーナスの金額に反映させるのも特に問題はありません。遅刻が勤務態度の評価に影響することは当たり前です。そしてそもそもノーワーク・ノーペイの原則や労基法91条とは関係ありません。

困ったことがあれば弁護士へ相談を

労基法の違反に該当する、遅刻による給料の差し引きをされた場合はどう対処すべきでしょうか。

もちろん、自ら個人で会社へ交渉することもできますが、このように法律も絡むような労働問題は、弁護士に相談することがおすすめです。

弁護士に相談すれば、法律の専門家としてさまざまな手続きをサポートしてもらえるので安心です。

しかし、やはり弁護士費用の負担が心に引っ掛かる方も多いでしょう。
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