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フレックスタイム制の残業代ゼロは嘘!総労働時間を超えれば残業代は出る

更新日:2024年03月26日
フレックスタイム制の残業代ゼロは嘘!総労働時間を超えれば残業代は出るのアイキャッチ

フレックスタイム制の会社で働いている人はこんな風に思っていませんか?


「残業し過ぎて疲れた。でもフレックスタイム制だから残業代ゼロなんだよ」
「出勤がある程度自由なのはいいんだけど、残業代が出ないからなぁ…」

このように労働者の働き方が多様化している中で、会社は従業員の能力を最大限に出させたり、残業代を削減させたりする目的でフレックスタイム制を導入しています。この新しい働き方は正しく理解されていなく、それが原因で「残業代ゼロ」といった思い込みが労働者の間には広まっているようです。

しかし、残業をしたのにも関わらず、その分の残業代が支払われないというのはれっきとした違法行為です。会社は見て見ぬフリをして誤魔化しているかもしれません。あるいは、フレックスタイム制は残業代を出さなくて済む制度だと勘違いしている可能性もあります。

どちらにせよ、これは違法ですので「残業代が出ないなら仕方ない…」と諦めてはいけません。労働者は働いた分を会社に請求する権利があり、証拠さえあれば、その請求は認められ必ず戻ってきます。

ただ問題なのが、このフレックスタイム制は、残業代や労働時間の計算方法が複雑な点です。そのため、ここではもらえるはずなのに、もらえていない残業代の請求について詳しくみていきましょう。

フレックスタイム制とは

そもそも、フレックスタイム制とは、労働者本人が出社時間と退社時間を自由に決めることが出来る制度です。従来の9~17時のような決まった時間の労働ではなく、通勤ラッシュを避けたり、子供の送り迎えをしたり等、労働者のライフスタイルに合わせることが出来るので自由度が高いのが特長です。

フレックスタイム制の規定

 労働基準法では、フレックスタイム制を採用する際、労使協定(労働者と会社の間で交わす書面上の契約)で次の内容について定めなければならないとされています。


①対象者
②コアタイムとフレキシブルタイム(定める場合のみ)
③清算期間と総労働時間
④1日の労働時間

 ひとつずつ見ていきましょう。

①対象者

 労使協定では、フレックスタイム制が採用される対象者を明記しなければなりません。例えば、よくあるケースとして挙げられるのが、「労働者全員」「特定の部署」・「特定の個人」等です。

②コアタイムとフレキシブルタイム(定める場合のみ)

 コアタイムとフレキシブルタイムをそれぞれご説明させていただきます。

コアタイム

コアタイムとは、フレックスタイム制の中で必ず出勤していないといけない時間帯のことを指します。コアタイムの始まりの時間にいなければ遅刻扱いになり、途中で帰れば早退扱いになります。
ただ、コアタイムは必ず設けなければならない時間帯ではありません。ですので、コアタイムのないフレックスタイム制を採用している会社も存在します。

フレキシブルタイム

フレキシブルタイムとは、いつでも出退勤することが可能な時間帯のことを指します。フレキシブルタイムは、コアタイムの前後に設けられます。フレックスタイム制では、コアタイムの前後どちらか一方のみに設けることは認められていません。

コアタイムの前後にフレキシブルタイムを設定する

よってフレックスタイム制は、下記画像のようにコアタイムの前後にフレキシブルタイムが設定されます。

フレックスタイム制の仕組み
出典:フレックスタイム制の適正な導入のために|東京労働局労働基準部・労働基準監督署

③清算期間と総労働時間

 続いて、清算期間と総労働時間についてご説明させていただきます。

清算期間

フレックスタイム制では、労働時間の計算を1日単位ではなく、清算期間という単位で行います。

清算期間とは?
フレックスタイム制では、日によって労働時間が変動するので、長時間働く日もあれば短時間の日もあります。そのため、会社は1日単位での労働時間の設定が難しくなるので、週ごと、あるいは月ごとの単位で労働時間の設定をします。
この、週ごと、月ごとに労働時間の設定をする期間を清算期間といいます。

清算期間の範囲は1ヶ月以内で定めなければなりません。また、「毎月1日から」等のように清算期間の起算点(スタートする日)を設ける必要もあります。

総労働時間

一般的な働き方の場合、法定労働時間として、1日8時間、週40時間が定められていますが、フレックスタイム制では総労働時間というものが定められています。
総労働時間は、週と月ごとに下記のように定められています。

  一般事業場 特例措置対象事業場
1週 40時間 44時間
1ヶ月 28日の場合 160.0時間 176.0時間
29日の場合 165.7時間 182.2時間
30日の場合 171.4時間 188.5時以
31日の場合 177.1時間 194.8時間

総労働時間は、上記の時間内で定めなければなりません。特例措置対象事業場とは、以下のような業種で常時労働者の人数が10名未満の事業所に限ります。

業種 主な内容
商業 卸売業・小売・不動産管理・出版などの商業
映画・演劇業 映画の映写・演劇などの興業
保険・衛生業 病院・診療所・保育園・老人ホームなどの社会福祉施設
接客・娯楽業 旅館・飲食店・理容室・遊園地などの接客娯楽

④基準となる1日の労働時間

フレックスタイム制は自由度が高いだけに1日の労働時間が日によって異なります。ですので、フレックスタイム制の対象者が有給休暇を取得する場合、何時間働いたものものとして計算するのかが不明確です。

そこで、フレックスタイム制では「基準となる1日の労働時間」を定めなければなりません。
 一般的には、下記の式で求められます。

総労働時間÷清算期間の所定労働日数

 ここで注意しなければならないのは、「基準となる1日の労働時間」が2で割り切れる時間かどうか、という点です。
 というのも、2で割り切れない時間にすると、半日の有給休暇を取得する労働者がいる場合に給与に不公平が生じてしまうのです。例えば2で割り切れない「7時間45分」を「基準となる1日の労働時間」に定めると、半日の有給休暇は「3時間52分30秒」働いたものとして扱われます。給与計算をする際は、分単位以下は切り上げなければなりません。すると、「半日の有給休暇を2回とった人」と「1日の有給休暇を取得した人」では、扱われる労働時間が同じにも関わらず、給与額に差が生じるのです。

 それを避けるためにも「基準となる1日の労働時間」は、8時間や7時間等の2で割り切れるキリのよい時間にするのがベターです。

フレックスタイム制特有の規定

 フレックスタイム制はフレキシブルな労働形態である性質上、特有の規定があります。

繰り越し制度

フレックスタイム制は、総労働時間を超えた(残業をした)月があったら、翌月の総労働時間を減らすように残業調整をすれば、残業代は払わなくて良いのでは?と思う人が中にはいるかもしれません。ですが、これは禁止されています。
その月に総労働時間を超えたら、その月に必ず残業代を払わなくてはいけないのです。

フレックス制度
但し、実労働時間が総労働時間を下回った場合は、その分を翌月に繰り越すことが出来ます。
フレックス制度
また、不足分の賃金をカットすることも可能です。
フレックス制度

遅刻・早退の相殺

 既に述べている通り、コアタイムに出勤をしていない場合、遅刻・早退扱いになります。しかし、清算期間内で実労働時間が総労働時間を下回っていなければ、遅刻・早退は相殺することが可能です。

残業時間の考え方と計算方法

ところで、フレックスタイム制での残業時間というと、どの時間のことを指すのか分かりづらいですよね。実はこれには、明確な決まりがあります。

清算期間内で総労働時間を超えてしまった分が残業時間になります。

そのため、たとえ1日15時間働いたとしても、それだけでは残業をしたかどうかの判断は出来ないということです。

総労働時間を超えたら残業

例えば、以下のAさんの場合は残業をしたことにはなりません。

フレックスタイム制の会社で働いているAさん
月曜日 12時間労働
火曜日 6時間労働
水曜日 10時間労働
木曜日 4時間労働
金曜日 8時間労働
土曜日 休日
日曜日 休日
合計 40時間

この場合、Aさんは月曜日と水曜日が、労働基準法で定めている法定労働時間8時間を超えてしまっているので残業をしているように見えますが、週の合計労働時間は40時間です。Aさんが働く会社が定めた週の総労働時間(法定労働時間)は40時間なので、この場合は
残業したことにはなりません。

それに対して、以下のBさんの場合は残業したことになります。

フレックスタイム制の会社(特例措置対処事業所)で働いているBさん
月曜日 10時間労働
火曜日 8時間労働
水曜日 10時間労働
木曜日 9時間労働
金曜日 10時間労働
土曜日 休日
日曜日 休日
合計  44時間

Aさんのように12時間も働いた日はありませんが、Bさんは週の合計労働時間が47時間で、Bさんが働く会社の総労働時間44時を超えているので3時間の残業をしたことになります。
このように、AさんBさんの例から、残業したかどうかの判断基準が1日の労働時間ではなく、総労働時間を超えているかどうかで決まるということが分かるかと思います。

おさらいをすると、
[実労働時間]―[会社が定めた清算期間の総労働時間]=残業時間ということになります。

弁護士がフレックスタイム制の残業について相談に乗ってくれる

このようにフレックスタイム制でも残業代は発生することがあります。もし、これを見て残業代が発生していることが分かって残業代の請求を考えている人や、残業代発生しているかどうかわからないため誰かに相談したい方は、まず法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士なら残業代の計算から請求の手続きまで、その人にあった的確なアドバイスをしてくれます。

また、未払い残業代の請求は請求した日から過去2年(24ヶ月)までしか遡れない時効制度があります。そのため、退職してからでは時効が消滅して請求ができない可能性があるので早めに行動することをお勧めします。

残業代に関する困りごとは弁護士へ相談を

フレックスタイム制でも残業代は発生します。決してゼロではありません。もし仕事量が多く、長時間の労働になりがちなのに残業代が出ないという人は、賃金が適切に支払われていない可能性が高いです。

もし、不当な扱いで残業代が未払いである際は、残業代の請求を検討してみてください。

そこで頼りになるのが「弁護士」の存在です。

法律のプロである弁護士なら、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、労働上で起きやすいトラブルを未然に防いでくれます。

労働トラブルに詳しい弁護士に相談し、自分の身を守りましょう。

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