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内定を取り消されたら損害賠償賠償請求できる?

更新日:2024年01月30日
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就職活動は人生における一大イベントです。
思い通りに就職活動を進められる人もいる一方、なかなか内定がもらえずに苦戦する人もいます。
ところで、就職活動で勝ち取った内定を取り消されてしまった場合はどう対応すべきでしょうか。

内定取り消しになれば就職活動を一からやり直しするなどの損害が出ます。
本記事では、内定を取り消された際、損害賠償を請求できるのか解説していきます。

内定とは?

会社側は10月頃に学生へ内定通知を送付します。
内定の通知がされた後は、学生と会社でどんな法律の関係が成り立つのでしょうか。
法律の観点から言えば、会社が内定を出した時点で会社と学生との間には労働契約が生じていると考えられます。
しかし、実際はその時点ですぐに学生が仕事をするわけではありません。
そこで、事情があれば会社側は内定取り消し、学生側からは辞退ができます。
これを「就労(効力)始期付解約権留保付労働契約」と呼びます。
長くて難しい言葉に思えるかもしれませんが、意味は下記のようになります。
「就労始期付」…働き始める時期をあらかじめ指定する
「解約権留保付」…労使双方に解約権がある

どんな場合でも解約は可能

「解約権留保付」という言葉を聴けば、各々が望んだタイミングで解約できるような印象があるでしょう。
しかし、入社直前となる3月31日に契約を解除するといった行為は相手にとって大迷惑になります。
そこで裁判所は、会社側が自由に内定取り消しできるものというふうに考えていません。
その理由としては「解約権留保付」であっても、労働契約はすでに成り立っているため解雇に準じて考えることになるからです。
具体的には、解約権留保の趣旨や目的を検討し合理的で、社会的に相当であるケースに限定して解約権を行使できます。
内定者の場合はすでに雇っている労働者を解雇する場面とは状況が違うので内定取消しができるのは、主に下記のようなケースです。

  • 学生が学校を卒業できなかったケース
  • 健康診断の結果、仕事ができる健康状態ではなかったケース
  • 履歴書や誓約書に偽りの記載をしたケース
  • 内定通知後に突然経営状況が悪化して労働者の削減をせざるを得ないケース

上記からわかるように、基本的には学生の方によほどの問題がない限り学生の内定取り消しをするのは難しいのです。
また、採用時に把握することが可能な事情は、後の内定取消しの理由として成り立ちません。

これまでの裁判例で「採用の面接時に陰気な印象を持っていたことが内定を出すにあたっては不適切だと考えていたが、一旦内定を出しておいた。ただし陰気な印象を打ち消す要素がその後もなかったため内定を取り消すことにした」というものがありました(大日本印刷事件・最高裁昭和54年7月20日判決)。
最高裁は、陰気な印象は面接時から把握できていたことなのだから、後に「陰気さを原因にして内定を取り消すのは解約権の濫用である」と判断しています。

内定の取り消しが違法となるケースは

一方、内定取り消しが違法となるケースも存在しています。
それは、「会社側が正当な理由なく一方的な内定を取り消した場合」です。

先に述べたように、内定を出す時点で「会社と内定者の間には労働契約が成立している」と見なされます。
したがって、内定を取り消す際は労働契約法に沿った正当な理由が必要となります。もし正当な理由なく内定を取り消せば、労働契約法に反して違法と認定される可能性が大きいのです。

不当な内定取り消しへの対処方法

では、不当な内定取り消しをされた際、どのように対処すべきなのでしょうか。

内定取り消しを無効化する

はじめに、正当な理由なく内定を取り消されたら、当初の予定通り入社できます(裁判上では、「(労働者としての)地位確認請求」と呼ばれます)。

これまでの事例としては、大手テレビ局のアナウンサーが、夜の店でアルバイトをしてたことを理由に内定取消しをされたことです。しかし、学生は裁判を起こして最終的には予定通り入社しました。
本事例は和解で終了しましたが、争い続けていたにしてもアルバイトの経歴で裁判所が内定取り消しを認めるとは考えづらいのが実情です。

損害賠償請求をする

不当な理由で内定を取り消されれば、会社に損害賠償請求もできます。
内定取り消しとなり会社との信頼関係がなくなれば入社して働き始めたとしても、居心地はよくないでしょう。

しかし、本来は入社して働いていれば賃金が発生していたので、学生側には損害があると言えます。
さらに、内定取り消しが原因で留年せざるを得ないといった状況にも追い込まれかねないのでその精神的苦痛の分を慰謝料として請求できる可能性もあるのです。

内定取り消しでの損害賠償金額の相場と裁判例は

違法な内定取り消しをされて損害賠償を請求したケースでは、慰謝料の相場が50万〜100万円くらいとなっています。

これまでの裁判例では下記のようなものがありました。
まずは、内々定の例にはなりますが、内定通知書授与日の2日前に会社が正当な理由なく内々定を取り消したという事案です。
本事例では、学生が会社との間で確実に労働契約が成立するといった期待を侵害したとして、慰謝料85万円が認められました。(コーセーアールイー事件・福岡地裁平成22年6月2日判決)

他にも、社会人の転職の例となりますが転職先から内定通知を受けたため、勤めている会社に退職届を出すなど準備を進めていたにも関わらず内定を保留・撤回された事例があります。
本事例では、仕事を失い改めて就職活動を行わなければならない事態に追い込まれたことから、慰謝料として100万円が認められました(オプトエレクトロニクス事件・東京地裁平成16年6月23日判決)。

内定取り消しと闘う

もし会社から内定取り消しされて地位の確認や損害賠償請求をするのであれば、資料が必要です。
内定、内定取り消しの通知書などがあれば一番良いのですが、場合によっては口頭で内定通知や内定取消通知がされることも少なくありません。

そういった場合には、文書による告知を求めるとともに、口頭で告知された日付・内容などを明確に記録すべきです。
そして、仮に内定取消しの理由が「当社の都合により」といった非常に曖昧なケースでは学生側も納得できません。

会社にはきちんと根拠を説明してもらう必要があります。
これは、会社から従業員に退職を促して自ら退職してもらうことを行う「退職勧奨」にも似ています。内定取り消しに対して納得できないのであれば引き下がってはいけません。
もし、「内定を取り消されるくらいなら」とその会社に入社する気がなくなったにしても、再び就職活動を行う負担が生じるのは確かです。そのため、被った損害を明確化するためにも内定辞退には応じるべきではありません。
内定取消しの効力について会社と争う場合、最終的には訴訟で勝敗を決めることになります。
そして、有利に進めるためには早い段階で弁護士へ相談することも大切で

不当な内定取り消しをされたら弁護士へ相談を

不当な内定取り消しを受けた場合、弁護士へ相談するのがおすすめです。
なぜなら、会社と内定者の間には規模や力などの大きな開きがあります。

内定者が自分で損害賠償請求をするのもできないことではありませんが一学生が会社という大きな組織を相手にして交渉を進めていくのは非常に大変です。不当な内定取り消しを解決していくためには、労働問題に強い弁護士へ相談しましょう。

しかし、やはり弁護士費用の負担が心に引っ掛かる方も多いでしょう。
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編集部

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