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自己都合退職を会社都合退職に変えて失業保険を受給出来るケースとは

更新日:2024年09月20日
自己都合退職を会社都合退職に変えて失業保険を受給出来るケースとはのアイキャッチ

退職により給付される失業保険(失業手当)は、求職者にとっては、重要なライフラインとなります。
 しかし、失業保険には難点があります。それは、自己都合による退職の場合、「失業後、すぐに給付してもらえない」という問題です。

 自己都合退職の場合、給付されるまで3ヶ月と7日間(給付期間3ヶ月+待機期間7日)かかります。これでは、失業保険を受け取る前に、幸いにも次の転職先が見つかり、結局は給付されなかったというケースも少なくないでしょう。

 一方、会社都合で退職した場合、失業保険が給付されるタイミングが、自己都合で退職するより3ヶ月早まります。つまり、会社都合で退職した方が、圧倒的に得といえるのです。

 では、自己都合退職した方は、失業保険を受給するために、3ヶ月と7日間待つしかないのでしょうか。
会社を辞める際は自己都合退職にして、後日、ハローワークで会社都合退職に変更することが出来ます。

 そこで今回は、失業保険を早く給付してもらうための、自己都合退職を会社都合退職に変更するケースを中心にご説明していきます。

自己都合退職と会社都合退職

自己都合退職を会社都合退職に変えることで、失業保険を受給出来る時期を早めることが出来ると述べましたが、まず、自己都合退職と会社都合退職について、ご説明していきます。
 退職する際、仕事を辞める理由を、「会社都合退職なのか?」「自己都合退職なのか?」というどちらかを、会社に伝えなければいけません。

自己都合退職とは

 自己都合退職とは、スキルアップのためや、現在の給料が安いため、他にいい会社を見つけたため等、現状をよりよくするために、自分の意思で退職する場合のことをいいます。

会社都合退職とは

 会社都合退職とは、一般的には、定年退職やリストラ、会社が倒産してしまった場合等のことをいいます。

失業保険における自己都合退職と会社都合退職の違い

 では、失業保険における自己都合退職と会社都合退職は何が違うのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

【違い①】受給が開始される日

自己都合退職者は、ハローワークに離職票を提出してから、7日+3ヶ月後に初めて失業保険の受給が開始されるのです。
 そのため、自己都合退職者は離職後、3ヶ月間は失業保険の援助なしで生活を組み立てていかなければなりません。
一方、会社都合退職者は、ハローワークに離職票を提出した7日後に、初月分の失業保険を受給することが出来ます。

【違い②】受給期間

 自己都合退職者と会社都合退職者では、受給出来る期間も異なります。
以下の表で、期間の違いをご覧下さい。

【自己都合退職者が失業保険を受給出来る期間】

年齢
1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
~64歳 なし 90日 90日 120日 150日

【会社都合退職者が失業保険を受給出来る期間】

年齢
1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
~29歳 90日 90日 120日 180日 なし
30~34歳 90日 90日 180日 210日 240日
35~44歳 90日 90日 180日 240日 270日
45~59歳 90日 180日 240日 270日 330日
60~65歳 90日 150日 180日 210日 240日

 自己都合退職者の場合、被保険者期間が1年未満だと失業保険が受給出来ません。しかし、会社都合退職者であれば、半年以上の被保険者期間があれば、失業保険の受給が可能です。
 また、自己都合退職者は、64歳以下の全ての人が一律の受給期間ですが、会社都合退職者は、年齢が上がるにつれ受給期間が長くなり、最大で240日間も失業保険を受給できます。

【違い③】解雇予告手当の可否

 会社都合退職者は、退職理由が解雇に該当する場合、失業保険とは別に最大30日分の給料に当たる解雇予告手当を受け取ることが出来ます。
会社側が従業員を解雇する場合、本来、離職日の「30日以上前に予告すること」ということが決まりになっています。しかし、事前に告知することが難しいのであれば、「最大30日分の給料を解雇予告手当として支払わねばならない」と労働基準法第20条に規定があります。

解雇予告手当の支給額は、解雇の通知を受け取ったタイミングによって、違います。

・「30日後に退職をして欲しい」…解雇予告手当の支給なし
・「今日退職して欲しい」…給与30日分が支給
・「10後に退職して欲しい」…給与20日分が支給
・「23日後に退職して欲しい」…給与7日分が支給

会社都合退職のデメリット

以上をお読みになり、失業保険も受給することを考えると会社都合にした方がよいとお分かりいただけたのではないでしょうか。
 しかし、会社都合退職にもデメリットはあります。それは、自己都合退職に比べ会社都合退職は、転職や再就職に不利になるということです。

 というのも会社都合退職にすると、転職希望先から「前職は実力不足や成績不振を理由に解雇されたのではないか」と疑われるためです。基本的に、企業というのは、優秀な人材であればあるほど、会社側から辞めさせようとはしないものです。

 会社都合退職の理由が、会社の倒産等、明らかに労働者に非がないものならよいですが、個人の業績不振や実力不足を彷彿とさせる理由の場合は、相手にそれが伝わってしまうことで、転職が不利にはたらく可能性があります。

経歴は次の転職だけでなく、一生ついて回ります。今後、転職する度に会社都合退職の事実が、何らかの影響を与える可能性があることは、心に留めておきましょう。

自己都合退職を会社都合退職に変更出来るケース

 それでは、自己都合退職を会社都合退職に変える方法を説明していきます。
 そのためには、会社都合に変えることが出来るケースに該当していることが前提条件です。それは、以下の13項目があります。1つずつ見ていきましょう。

【変更】➀毎月45時間以上の残業時間

 退職前3ヶ月間の残業時間が、毎月45時間以上の場合、会社都合退職にすることが出来ます。
 これは36協定で定められている、時間外労働の1ヶ月の限度時間である、45時間を超えているため、会社の違法行為です。このことから、会社に原因があると見なされ、自己都合退職から会社都合退職に変更することが出来ます。

このケースは、労働者が残業したことが分かる証拠を用意する必要がありますが、最も会社都合に変えやすいです。

【変更②】給料の減額

 従来の給料よりも85%以下に減額された、もしくは、業務時間の短縮で85%にまで落ち込んだことがある場合は、会社都合退職に出来ます。

これは、労働基準法第91条で規定されている、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の値が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が、一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」に対しての、違反行為です。
そのため、会社に原因がある退職と見なすことが出来ます。よって、自己都合退職から会社都合退職に変えることが出来るのです。

ただし、このケースは、85%以下に減給されたことが分かる証拠として、給与明細書等の賃金が確認出来るものが必要です。

【変更③】極端な業務内容の変更

 極端な業務内容の変更をされた場合も、会社都合退職に変更することが可能です。
 その理由は、労働基準法第15条で定められている「会社は労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」に違反している可能性があるためです。

 極端な業務内容の変更は、会社の違法行為と見なされ会社都合退職に出来る可能性があるのです。
 例えば、「技術職での契約をしたはずが、営業に回されてしまった」「10年以上同じ職場で働いていたところ、突然、畑違いの業務に異動させられ、新しい業務の指導が行われず、適応出来なかった」等を理由にした退職した場合、会社都合退職に変更することが出来るでしょう。

 このケースは、入社時に交わした雇用契約書等の書類が、証拠として必要になります。

【変更④】パワハラ・セクハラ

 パワハラやセクハラは、言うまでもなく不当な行為に該当します。そもそも、法的にも訴えられる事案でもあります。そのため、会社都合退職に変更することが可能です。
 しかし、これには問題点があります。それは、証明することが相当大変なところです。本格的に争う場合は、内容を細かく記録し、録音する等、第三者に証明出来るような証拠を、集める必要があります。

【変更⑤】勤務地の変更

 通うのに2時間以上かかる場所にオフィスが移転し、通勤が困難になった場合や、本人の承諾なしの転勤命令があったことを理由に退職した場合も、会社都合退職にすることが出来ます。
 これは、労働者が勤務を続けることを困難にした原因が、会社にあると見なされるためです。

 入社時に交わした労働契約書等に、「転勤なし」と記載された書類があると証拠となります。

【変更⑥】「雇止め(やといどめ)の予告」がない

 厚生労働省が告示する「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」において、会社は、期間契約の業務で3回以上更新しているか、1年を超えて継続して雇っている有期労働契約者を、契約更新しない場合、少なくとも契約期間が満了する日の30日前までに、未更新の旨を労働者に伝える必要があるとしています。

これを「雇止めの予告」といいますが、この予告をしないで未更新にした場合は、解雇と同じ扱いです。解雇は、会社の都合に該当するため、会社都合退職にすることが出来ます。

雇止めの予告は、タイミングによって解雇に当たるかどうかが変わります。

・「30日後に退職をして欲しい」…雇止めの予告に該当するため、解雇ではありません。
・「今日退職して欲しい」…雇止めの予告に該当しないので、解雇扱いになります。
・「23日後に退職して欲しい」…雇止めの予告に該当しないので、解雇扱いになります。

 このケースで証拠となるものは、入社時に交わした雇用契約書等です。

【変更⑦】会社の法令違反

 会社の業務が法令に違反したことを理由に退職した場合も、会社都合退職にすることが出来ます。
 よくある例が、健康に関することです。健康障害を引き起こす原因があり、行政から指摘されながらも、放置された職場等です。
 これで退職する場合、会社の劣悪な環境が原因のため、会社都合退職にすることが出来ます。

 行政が入らない場合は、労働者自ら証明をしなければなりません。
 例えば、シックビルディング症候群(換気の悪いビルの中にいることで起こる様々な病気)になり、退職を余儀なくされた場合、専門病院で自分の病状を証明し、オフィス内の化学物質の量が、法律で定めた規定値を上回ることが証明出来るなどです。

【変更⑧】給与の未払い

 月給のうち、3分の1以上の金額が、2ヶ月連続で支払われなかった場合、会社都合退職にすることが可能です。
 それは、労働者の退職の原因が会社にあると見なされるためです。

【変更⑨】休職命令

 仕事量の減少等で経営が厳しいという会社の一方的な都合で、休職を命じられたことをきっかけに退職する方も、会社都合退職にすることが可能です。但し、このケースでは、休職期間が3ヶ月以上続いた場合に限ります。

【変更⑩】会社の破産

 破産、民事、再生、手形取引の停止等、企業の破産によって退職した方は、会社が原因による退職になります。会社都合退職にすることが出来るでしょう。

【変更⑪】身内の死亡など

父親や母親の死亡、もしくは病気で扶養するために、退職せざるを得ない方は、特定受給資格(会社都合退職者と同等の扱い)の対象となります。そのため、会社都合退職にすることが出来ます。

【変更⑫】心身の不調

体力不足、心の障害、病気、負傷、器官系の障害で退職した場合は、心身に危害が及んでいると見なされ、特低受給資格者になります。よって、会社都合退職に該当させることが出来ます。

【変更⑬】会社に多くの退職者がいた場合

事業所単位で1ヶ月に30人以上の退職の予定、あるいは会社の3分の1を超える人が退職するといった雇用が起こった場合も、会社都合に該当します。これは、会社に何かしらの原因があったことから多くの退職者が出たと見なされるためです。

 以上①から⑬のように、会社が採用条件に違反した場合や法的に違反しているケース、労働者が退職を余儀なくされた場合等は、自己責任ではなく会社責任に当てはまるため、会社都合退職にすることが出来るのです。

会社都合にするための証拠を準備する

 前項でも、証拠が必要と述べましたが、有利な証拠があれば、ハローワークの職員は迅速に動いてくれます。そのうえ、自己都合退職に判定してもらえるように有利に働きます。

 実例では、「毎月80時間は残業しているのにも関わらず、意図的にタイムカードを操作され、20時間以下に残業時間が減らされていることが理由で辞めた」方がいます。この方は、即時に会社都合と見なされました。

 この実例は、事前に証拠を準備していたからこそ、スムーズに解決できたパターンです。証拠が認められると、ハローワークの職員は会社に直接連絡を取って、事実確認をします。さらに、労働環境が極端に劣悪な場合、労働監査局から監査が入り、業務改善命令につながるのです。

労働トラブルに関する困りごとがあれば弁護士へ相談を

 企業は会社都合退職を避けるために、退職者に自己都合退職を促す可能性もあります。
 しかし、冒頭でも触れている通り、会社を辞める際は自己都合退職にして、後日、ハローワークで会社都合退職に変更することが出来ます。
退職後、ハローワークで会社都合退職に変更出来るように、在職中に証拠を集めておきましょう。

また、自己都合退職を会社都合退職に変更出来るケースでも解説したとおり、パワハラや一方的な給料減額といった不当な扱いを受けて悩んでいる方は少なくありません。

とはいえ、会社都合退職に変更しようと思っても、有益な証拠がないケースもあるでしょう。そこで頼りになるのが「弁護士」の存在です。

法律のプロである弁護士なら、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、労働上で起きやすいトラブルを未然に防いでくれます。

労働トラブルに詳しい弁護士に事前に相談しておくのがおすすめです。

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