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退職時の有給の買取に関する疑問:金額・税金は?会社に拒否されたら?

更新日:2024年09月20日
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みなさんは、有給休暇をしっかり消化出来ていますか?
精力的に働くビジネスマンの中には、有給休暇をなかなか取れない方も、少なくないでしょう。
そういった方々には、有給休暇の買い取りを請求することも一つの手です。特に退職を考えている人にとっては、「買い取りが出来るかどうか」が気になりませんか?

そこで、今回は退職時の有給休暇の買取について説明をしていきます。

有給休暇制度とは

有給休暇制度は、「賃金を得ながら休暇を取る」ことの出来る労働者の権利です。また、有休休暇は「労働者が仕事から離れて心身を休み、ゆとりある生活を送る」という目的で制定されました。
この有給休暇を取得するためには、条件があります。

有給休暇の取得の条件

有給休暇は、以下の条件を、両方とも満たした場合に付与されます。


・入社から6ヶ月の経過
・6ヶ月の全労働日のうち、8割以上出勤している

 つまり、病気や怪我等で2割以上休んでいない限り、有給休暇は与えられます。ただし、業務上の怪我や病気、妊娠・出産による育児休暇、介護休業等は出勤したことと見なされます。

有給取得日数について

有給休暇の取得日数は、労働基準法で定められており、6ヶ月以上働くと10日間付与されます。それ以降は、以下の表の通り、1年ごとに取得する有給の日数は増えていきます。

勤続

日数

6ヶ月

 

1年

6ヶ月

2年

6ヶ月

3年

6ヶ月

4年

6ヶ月

5年

6ヶ月

6年

6ヶ月

有給

取得

10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

週の所定労働日数が4日以下かつ週の所定労働時間が30時間未満の場合

 上記は、正社員等のように所定労働日数(労働者と会社の間で事前に定めた労働日数)が週5日の労働者の有給取得日数です。
 他方で、週の所定労働時間が4日以下かつ週の所定労働時間が30時間未満の、アルバイトやパート等の労働者にも有給休暇は付与されます。
付与される日数は労働日数によって異なります。詳しくは以下の表をご覧ください。

  週の労働日数 年間の所定労働日数※ 継続勤務年数
0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上



4日 169~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

※週以外の期間によって労働日数が定められている場合

有給休暇の繰り越し

 年間で10日以上付与される有給休暇を、1年間で消化することが難しい場合もあります。そのような方もいるため、有給休暇は次年に繰り越しすることが可能です。ただし、有給休暇には時効があることから、繰り越せるのは2年までとなっています。

有給休暇の買取は原則認められていない

 有給休暇の概要をさらったところで、本記事の本題である「有給休暇の買取」について触れていきたいと思います。
 有給の買い取りとは、文字通り、有給をお金で買い取る方法です。

 労働基準法上では原則、会社が有給休暇を買い取る行為は認められていません。それは、会社が金銭で買い取ることが、有給休暇の本来の目的である「労働者が仕事から離れて心身を休み、ゆとりある生活を送る」を奪う行為になる、と考えられているためです。

有給休暇の買取と退職時

但し、例外的に有給休暇の買取が認められるケースがあります。
 そう、それは今回の表題にされている「退職時」です。

 会社は、退職日が確定している労働者に限り、使い切れない有給休暇を買い取ることが可能です。ただ、それは労働者が買取を希望していることが前提です。
 労働者が退職日までに有給休暇を消化することを希望している場合、会社は有給休暇の買取が認められま。もし、労働者の意思に反して会社が有給休暇の買取をした場合は、違法の可能性が考えられます。

買取と拒否

 また、退職する労働者が有給休暇の買取を希望しても、会社はそれを拒否することが出来ます。会社はあくまで買取に応じる義務がないためです。

有給休暇の買取金額

 では、有給休暇の買取は1日当たりいくらになるのでしょうか。
 労働基準法では有給休暇の買取金額についての規定はありません。労働者と会社の話し合いで自由に金額を設定出来ます。
 一般的には、月給を1ヶ月の平均労働日数で割った値が、1日当たりの買取金額です。

退職時の有給休暇の買取と税金

 有給休暇の買取をする方の中には、買取額に税金が課されるのかどうかを気になる方は少なくないのではないでしょうか。
退職時の有給休暇の買取額は、退職をきっかけに支給されているため退職所得の扱いになります。退職所得は、1年あたり40万円の非課税枠が設けられています。

 ですので、有休休暇の買取額が40万円以下の場合は、税金が課されない可能性があります。しかし、40万円を超える買取額が発生した場合は、超過した分に対して課税される可能性があります。

よくあるトラブル例と対策

 退職時の有給休暇の買取については、買取額が法律上で定められていない等、自由度の高いものであるため、トラブルが後を絶ちません。ここでは、よくあるトラブル例と対策をご紹介します。

有給を買い取る代わりに、退職日まで出勤するよう命令された

 「有給を買い取る代わりに、退職日まで出勤するよう命令された」というケースがよく起こります。
 労働者が有給の買取に同意しているようであれば、その命令は認められるでしょう。しかし、労働者の意思に反して、会社が一方的に有給休暇を買い取ることは認められていません。

 つまり、このケースでは労働者が有給の買取に同意しているかどうか、が争点になります。もし、労働者の意思に反して有給を買い取られるようであれば不当な買取の可能性があります。

買取額が極端に低い

 有給休暇の買取額が極端に低いというトラブルも挙げられます。
 ただ、既述の通り有休休暇の買取額は法律で定められていません。会社と本人の話し合いで買取額を決定するのが通例です。

 話し合うことなく極端に低い金額で買い取られそうな場合は、会社と交渉する場を設けた方がよいでしょう。
 交渉したにも関わらず低い買取額に設定されそうな場合は、有休買取ではなく有給消化に切り替えた方が賢明と言えるでしょう。

自身のみ買取対応をしてくれなかった

 これまでは退職者に対し有給休暇の買取対応をしていたにも関わらず、自身の退職時のみ買取を拒否された、というケースもあります。
 その場合は、会社に有給休暇を買い取ってもらえるよう交渉しましょう。それでも会社が買取を拒否するようであれば、会社を指導してもらえるよう労働基準監督署に相談してみましょう。

引継ぎがあって有給休暇を消化出来ない

 「退職に伴い引継ぎを行わなければならないため、有給休暇を消化する期間を設けられない」という悩みもよく挙げられます。
 確かに、退職には引継ぎが付き物です。しかし、有休休暇の取得は労働者の権利です。取得が難しいようであれば、買取をしてもらえるよう会社と交渉を進めていきましょう。

会社の有給休暇買取のメリット

 有休休暇の買取は双方の意見の一致が必要になるため、労働者は会社に買い取りをしてもらえるよう交渉する必要があります。そのためには、まず労働者が「有休休暇を買い取ることによる会社のメリット」を把握する必要があります。

 そこで、ここでは会社が有給休暇を買い取るメリットをお伝えします。それを理解することにより、買取に向けて有利な交渉を進めことが期待出来ます

メリット

 メリットは次の3つが挙げられます。

【メリット①】買取額が低ければ会社の負担が減る

有休休暇の買取額は、労働者と会社の話し合いのよって自由に設定することが出来ます。有給休暇の消化期間の賃金より買取額が安価であれば、経費の負担が軽減されます。

【メリット②】各種社会保険料の負担が減る

 会社は有休休暇を買い取ると、各種社会保険料の負担が減ります。
というのも、退職前に有給休暇を取得すると、その消化期間は就労中と見なされるため、会社は各種社会保険料を負担しなければなりません。一方、有休休暇を買い取ると、消化するより就労期間が短縮されるため、各種社会保険料の負担が軽減されるのです。

【メリット③】労使間のトラブルを防げる

 有休休暇の買取は、労使間(労働者と会社の間)のトラブルを防げるメリットもあります。
例えば、1ヶ月後に退職日をむかえる労働者が、40日の有給休暇を残しているとします。すると、その退職者は40日分を消化しきることなく退職日をむかえます。労働者には有給休暇を取得する権利があるため、消化しきれないことはトラブルの元になる可能性があります。

そこで、有給休暇の買取を選択することで、消化しきれない有給休暇を処理することが出来ます。
それにより、労働者の不満を生じさせにくくするメリットが生まれます。

以上3つのメリットを交渉に織り交ぜていくと買取の交渉を有利に進めていけるでしょう。

労働問題に関する困りごとは弁護士への相談も検討しよう

忙しいビジネスパーソンにとって、有給を自由に消化することが難しい方も多いでしょう。
そもそも、有給を取得させてもらえない、強制労働をさせられている、という問題を抱えている方は少なくありません。

もし、会社から不当な扱いを受けているのであれば第三者に助けを求める必要があります。
そこで頼りになるのが「弁護士」の存在です。

法律のプロである弁護士なら、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、労働上で起きやすいトラブルを未然に防いでくれます。

労働トラブルに詳しい弁護士に事前に相談しておくのがおすすめです。

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編集部

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