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管理職は36協定の対象外になるって本当?労働基準法の観点から解説

更新日:2024年02月08日
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 管理職の方は業務の性質上、残業が多いのは当然という風潮がありまうす。しかし一方で、36協定が適用されず無制限に残業をさせられるのは違法なのではないか、という声も少なくありません。
果たして、管理職の方は36協定が適用されないのは違法なのでしょうか。

そもそも36協定とは

 そもそも36協定とは、どのような内容の協定なのでしょうか。

 労働基準法第32条では「使用者(会社)は、労働者に1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならない」と定められています。
 しかし、会社には繁忙期と閑散期があるため、常時その時間内で収めることは困難です。

 そこで、労働者が会社の状況に即した働き方が出来るように、労働時間の延長や休日出勤を認める協定が施行されました。
 それが36協定です。労働基準法第36条で定められていことから、通称名として36協定と呼ばれるようになりました。

36協定を締結する条件

 1日8時間、1週40時間を超える労働は、労働者に健康障害を生じさせる可能性があると考えられています。そのため、以下のように36協定には以下に挙げる締結条件が設けられています。

【条件①】対象者

 36協定の対象者は、労働基準法第32条で定められている「1日8時間、1週40時間を超えて労働をさせてはならない」に該当する労働者です。
 それに該当する労働者は、管理監督者以外の社員や契約社員、パート、アルバイト等です。

 管理監督者とは、労働基準法41条で「監督もしくは管理の地位にある者」と定められています。
 「監督もしくは管理の地位にある者」という立場上、管理監督者は労働時間の制限が適用されないと考えられているためです。
 そのため、会社は管理監督者と36協定を締結する必要はありません。

【条件②】締結する者

36協定は従業員一人一人と締結しても効力は生じません。会社は下記のいずれかと締結しなければなりません。

⑴労働者の過半数が加入する労働組合
⑵労働者の過半数を代表する者

 1つずつ見ていきましょう。

⑴労働者の過半数が加入する労働組合

 「労働者の過半数が加入する労働組合」とは、社内の全労働者のうち半数以上が加入する労働組合のことをいいます。

労働組合について補足させていただきます。
 労働組合とは、労働条件の改善や維持を目的として労働者が主体となって結成する団体のことをいいます。法律では、労働組合を結成することで会社と労働条件について話し合いが出来る等の保障がされています。
 雇用主より立場の弱い労働者が、雇う側と対等な立場で交渉する機会を設けられるのが労働組合という組織なのです。

労働者の過半数が加入する労働組合がない場合、会社は次の説明する「労働者の過半数を代表する者」と36協定を締結する必要があります。

⑵労働者の過半数を代表する者

 労働者の過半数を代表する者を決定する際は、以下2つの条件を満たしていなければなりません。

管理監督者ではない

労働者の過半数を代表する者と聞くと、いわゆる従業員代表の管理監督者が該当すると考える人は少なくないのではないでしょうか。
しかし、監理監督者は、労働時間の制限から除外されるため、36協定の締結対象外です。
 そのため、管理監督者ではない人が、労働者の過半数を代表する者に選ばれなければなりません。

投票・挙手等で半数以上の指示を集めた者

労働者の過半数を代表する者は、 36協定を締結する代表者を選出することを目的に実施された投票・挙手等によって、半数以上の指示を集めた者でなければなりません。
 ですので、会社の経営陣によって選出された人や管理監督者は、「労働者の過半数を代表する者」とは言えないでしょう。

36協定と管理職

 ここまでお読みになり、管理監督者は36協定から適用除外されるということがご理解いただけたのでしょうか。
 しかし、本記事で焦点を当てたいのは、管理職は36協定が適用されるかどうかという点です。

①管理職は36協定の対象?

 「監督もしくは管理の地位にある者」である管理監督者が、36協定の対象外と聞くと、管理職は対象外と思う方は多いのではないでしょうか。

 しかし、「管理職」=「管理監督者」とは限りません。というのも、管理監督者の定義にある「監督もしくは管理の地位ある者」とは以下の要件をクリアしていなければならないためです。

・一定部門等を統括する立場である
・会社経営に関与している
・労働時間や仕事量を自身でコントロール出来る
・給与面で優遇されている

 もし、上記の要件を満たしていない管理職の方は管理監督者に該当しない可能性が考えられます。そのため、不当に36協定の対象者から除外されている可能性は否定出来ません。

②管理職しかいない場合の36協定の締結

 管理職しかいない場合の36協定の締結はどのようにすればよいのでしょうか。
 一般的に、管理監督者に該当する管理職は、労働時間に関する規定が適用除外になります。そのため、そもそも36協定を締結する必要はありません。

 しかし、管理監督者に該当しない管理職の労働者がいることも考えられます。そのような管理職は、36協定を締結する必要があります。

③管理職が別会社に派遣社員として出向した場合

 管理職が、別会社に派遣社員として出向した、36協定の扱いはどのようになるのでしょうか。派遣先で管理監督者である場合は、36協定を締結する対象外になる可能性があります。
一方で、別会社で業務内容が指揮命令を下すような管理監督者ではない場合は、労働時間の規制が適用される労働者扱いになる可能性があります。そのため、別会社で36協定を締結する必要性があるかもしれません。

④出向先で管理監督者になった場合

 役職等に就いていない労働者が、出向先で管理監督者になった場合、その出向者は36協定の扱いはどうなるのでしょうか。
 出向先では、労働時間の制限の適用除外になる出向者になるため、36協定を締結する対象にならない可能性が考えられます。

まとめ:労働トラブルに関する困りごとは弁護士へ相談を

36協定は、労働者が会社の状況に即した働き方ができる制度である一方、さまざまな法的な複雑さが伴います。ご自身の状況で適用されるかどうかは分かりづらい場合もあるでしょう。

そこで頼りになるのが「弁護士」の存在です。

法律のプロである弁護士なら、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、労働上で起きやすいトラブルを未然に防いでくれます。

労働トラブルに詳しい弁護士に事前に相談しておくのがおすすめです。

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