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未払い残業代請求の和解金の相場はどれくらい?

更新日:2021年03月10日
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未払い残業代を請求する方法は、主に任意交渉(内容証明郵便を発送し、会社に残業代の支払いを求めること)、労働審判(裁判官1名と労働審判員2名で構成される労働審判委員会によって審理される手続)、訴訟(裁判所に訴えて、権利・義務の法律的確定を求めること)の3通りがあります。
 中でも、労働審判では調停(対立する両者の間に入って、両者の妥協点を見出し、争いが止むようにすること)となり、会社から労働者へ和解金が支払われるケースが多いです。

 その場合の和解金の相場は一体どれくらいなのでしょうか。今回は未払い残業代請求における和解金の相場についてお伝えしたいと思います。

和解金に相場はない

 実は、未払い残業代請求の和解金には相場がありません。というのも、未払い残業代問題は事件ごとに事例が異なるためです。
 とはいえ、調停においては次のように和解金を提案されることが多いです。

月給の○ヶ月分

 調停の場で、裁判官から「和解金は月給の○ヶ月分くらいでいかがでしょうか」という提案がされることがあります。様々な判断材料を考慮した上で、何か月になるのかが提案されます。
 その判断は労働審判委員会(裁判官1名と労働関係の専門的知識と経験を持っている労働審判員2名で構成される組織)に委ねられています。

責任割合

 責任割合という考え方もあります。例を交えて説明させていただきます。
 例えば労働者から要求された和解金が100万円だとします。しかし、労働者にも2割程度の責任があると判断されると、会社の責任の割合は8割になります。よって「100万円×80%=80万円」なので、会社からろ労働者に支払われる和解金は80万円になります。

 このように責任の割合に応じて和解金を決定する方法を責任割合と呼びます。

和解金が支払われた判例

 それでは1つの判例を見ていきましょう。
 

【管理監督者が未払い残業代800万円を請求した判例】

 P社は6店舗の飲食店を経営する会社です。その内の1店舗の店長を務めていたAさんは、退職後P社に対し「未払い残業代800万円」を請求する旨の内容証明郵便を送付しました。それを受けて、P社は「支払う義務はない」と応じました。不服に思ったAさんは、P社に対し労働審判の申立をしました。
 申立書を確認すると、「未払い残業代800万円」の他に、「付加金800万円」の請求がありました。

 P社は弁護士に相談。弁護士にアドバイスされた下記を実行し、ある事実が判明しました。

Aさんが店長だった時のタイムカード等で勤怠記録を確認

従業員の証言により、Aさんはタイムカードを一度にまとめて記入していた可能性が高い、という事実が判明。

 これにより、P社は「Aさんが主張している時間外労働はそもそも存在しない」と主張した答弁書を作成。また、答弁書には「Aさんは店長という管理監督者に当たるため、残業代は役職手当等で支払っていた」という主張も付け加えました。
 P社は、答弁書を証拠書類とともに裁判所に提出しました。


 「残業代が役職手当によって支払われた」という主張は認められませんでした。一方、「タイムカード等の証拠によって時間外労働が存在していなかった」という主張は認められました。
 双方の意見を尊重し、未払い賃金の支払いは発生しなかったものの、P社はAさんに200万円の和解金を支払うように命じられました。

まとめ

以上のように、事件に応じて和解金が異なるのがお分かりいただけたのではないでしょうか。ですので、和解金には相場がありません。とはいえ、「月給の何ヶ月分」や「責任割合」といった考え方で和解金の支払いを命じられるケースがあると考えられています。
 和解金の支払いがどのくらいなのかについて知りたい方は、本記事を1つの参考にしてみてください。

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残業代請求弁護士ガイド 編集部

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