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歩合制に隠されたタクシードライバーの残業代

更新日:2024年03月19日
歩合制に隠されたタクシードライバーの残業代のアイキャッチ

労働時間が長いタクシードライバー。歩合制であることから残業代が支払わないケースが多いです。
 ですが、タクシードライバーにも残業代が発生することをご存知でしょうか?
 過去に未払い残業代の支払いを命じられた「国際自動車事件」に触れながら、タクシードライバーの残業についてお伝えしたいと思います。

タクシードライバーの労働環境は過酷

 タクシードライバーの労働形態は、二連日勤(1度に2日分の勤務をすること)を導入しているケースが多いです。二連日勤は24時間拘束が一般的ですが、タクシー業界では厚生労働省の労働基準局の指導により、「労働時間は1度に20時間以内、そのうち3時間は休憩」という勤務形態を採っています。

 しかし、歩合制を導入しているにも関わらず、限られた時間内に満足のいく歩合給を稼ぐことは容易ではありません。
 そのため、休憩時間を返上したり残業をしたりしながらタクシーを走らせるケースも珍しくありません。
 そのようなことから、タクシードライバーの労働環境は過酷なのです。

「国際自動車事件」の判決に見るタクシー業界の残業代問題

 実際に、タクシードライバーが裁判を起こして、残業代の支払いを命じられたケースは少なくありません。
 その代表例に挙げられるのが、タクシー会社の大手kmグループに属する国際自動車で働いていたタクシードライバーが訴訟を起こした「国際自動車事件」です。

概要

 国際自動車でも、給与形態は歩合制を採用しています。
 国際自動車の就業規則では、タクシードライバーに残業や休日・深夜労働が発生した場合、それらに対する労働賃金と同額を歩合給から差し引くという給与の計算方法を採っているのです。
 そのため、どんなに長時間労働をしたとしても残業代が発生しないのです。

 但し、労働基準法37条では「会社は労働者に1日8時間、1週40時間以上働かせたり休日に労働させたりした場合は25%割増の賃金を支払わなければならない」といった内容の規定があります。

 そんな国際自動車に対し、同社で勤務をしていたタクシードライバーら14名が歩合給から残業代等を差し引く就業規則は労働基準法37条に違反するため無効であると主張しました。2015年5月に、未払い賃金の支払いを求めて東京地方裁判所に提訴しました。

未払い残業代の支払いを命じられる

 この事件の争点は歩合制でも労働基準法37条が適用されるかどうか、という点です。
 歩合制であっても残業や深夜・休日労働をさせた場合、会社は労働者に割増賃金を支払わなければなりません。
 歩合給の中に固定残業代を含む給与形態を採っていたこの事件は、以下のような判決が下されました。


・残業の有無に関わらず給与が一定である。
・通常の賃金と残業代の部分の判別が出来ない。
・残業時間に応じて賃金が増加していなければ残業代の支払いを行ったとは言えない

 以上の理由により、タクシードライバー14名に計4,000万円を支払うように命じられるかたちで事件は決着を迎えました。

その後

 国際自動車はその後、賃金規定を変更しています。変更内容は公表されていませんが、タクシードライバーに不利益が被らないような賃金改定が行われたことが予想されます。大手のkmグループに属する会社に一石を投じたことにより、その波紋は大きく広がりタクシー業界に蔓延る残業代未払いの改善に繋がったとも言えるでしょう。

タクシードライバーにも残業代は発生する

 タクシードライバーの給与形態は歩合制のケースが多いです。その場合、残業代や休日・深夜手当が支払われていないケースが多いです。
 しかし、労働をしたのであれば働いた分の賃金は支払われなければなりません。

 ですので、あなたの働いた時間が労働時間の定義に該当するのであれば、残業代は発生する可能性があります。

労働時間の定義とは

労働時間の定義については、労働基準法32条で「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」を労働時間と定める、といった内容が記述されています。
つまり、「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている」かどうかが労働時間の判断基準とされているのです。

 これを、タクシー業界に当てはめると、「➀会社が行うように」「②会社から命令された場合や会社でせざるを得ない場合」の2つの条件が揃った場合に、労働時間と見なす、ということを示しています。
ちなみに、➀については必ずしも社内等である必要はなく、会社から場所の指定をされていれば条件を満たします。

残業代の請求について

 もし労働時間の定義に該当し、残業代の支払いが行われていないようであればサービス残業をさせられている可能性が考えられます。過酷な長時間運転による交通事故等、大事になるまえに、未払い残業代の請求を考えた方がようでしょう。

未払い残業代を請求するためには残業をした証拠が必要です。これは、立証責任(確実な証拠で証明する責任)が請求者にあるためです。
タクシードライバーは、タイムカード等で労働時間が管理されていないことが多いため、代わりに以下のものが残業証拠として挙げられます。

・デジタルタコグラフ(自動車運転時の速度、走行時間、走行距離等の情報を、メモリーカードに記録するデジタル式の運行記録計)
・日報・週報
・手帳等の記録

まずは、以上の証拠になるものを入手したうえで、こちらの下記の記事を読んでみて下さい。残業代請求に向けてするべきことが理解出来るでしょう。

残業代に関する困りごとは弁護士へ相談を

「国際自動車事件」であったように、タクシー業界では歩合制という”隠れみの”を悪用して残業代の支払いから免れている会社は少なくありません。とはいえ、無理が祟って交通事故が起こってしまっては本末転倒です。ドライバー自身が未払い残業代の請求に向けて動くことが大切と言えるのではないでしょうか。そして、その行動がタクシー業界の労働改善に繋がるかもしれません。

あまりにも違法な残業を強いられているようであれば、残業代の請求をしましょう。

そこで頼りになるのが「弁護士」の存在です。

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