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「みなし残業」制度を理解して会社の誤魔化しを見抜こう!

更新日:2024年09月20日
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仕事をしている時、よくこんな言葉を聞くことありませんか?
仕事をしている時、よくこんな言葉を聞くことはありませんか?こんな時にあなたならどうしますか?
「うちの会社は『みなし残業』制度だから、残業しても残業代は変わらないんですよね。」

しかし、あなたは「みなし残業」でも、場合のよって残業代が別途支給されることをご存知でしたか? このことを知らずに、実は支給されるはずの残業代が支払われず、働いている方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は「みなし残業」制度についてご説明させていただきます。

「みなし残業」制度とは

「みなし残業」制度とは、実際の労働時間に関わらず、あらかじめ決められた時間分の“みなし残業代"を支払うことをいいます。あらかじめ決める残業時間は、36協定で45時間、年間360時間までという上限が設けられています。

この「みなし残業」制度は別称、「見込み残業」制度と呼ばれることがあります。
また、みなし残業代は、「営業手当」や「業務手当」、「時間外手当」という項目名で支給される等、様々な言い方をされています。

→36協定についてはこちらの記事で詳しく説明をしています。

「みなし残業」制度が認められる要件

 この「みなし残業」制度は、次の要件を満たしている場合に適用されます。

【要件①】就業規則・労働契約書に規定がある

 「みなし残業」制度を適用するためには就業規則、労働契約に規定がある必要があります。

■就業規則
就業規則に規定があるだけでなく、労働者に「みなし残業」制度についての周知がされている必要もあります。

■労働契約書
 就業規則に規定がない場合は、改めて労使間(労働者と会社)で、「みなし残業」制度に関する契約契約書を交わさなければなりません。

【要件②】みなし残業代と基本給が明確に区分されている

 みなし残業代と基本給が明確に区分されていなければなりません。
例えば、「基本給30万円(うち5万円は30時間分の「みなし残業代」とする)」というような文言が、就業規則や雇用契約書に明記されているイメージです。もしくは、「基本給30万円(30時間分の残業代5万円を含む)」というような定め方もできます。

【要件③】

 実際の残業時間が【要件②】の、みなし残業時間を超えた場合は、別途割増賃金を支払わなければなりません。そのため、割増賃金を支給する旨を、就業規則か労働契約書に明示することが要件です。

→割増賃金についてはこちらの記事で詳しく説明をしています。

「みなし残業」制度のメリット

では、この「みなし残業」制度のメリットをみていきましょう。
 「みなし残業」制度のメリットは、会社にも労働者にもあります。

■会社側のメリット
 残業時間が、「みなし残業」として決められた時間内であれば、残業代の計算をする手間が省けます。

■労働者側のメリット
 残業時間が少なくても一定の残業代を支給されます。“仕事が早くて残業が少ない人"より、“仕事が遅く残業が多い人"の方が、給料が多いという不公平さを解消出来ます。

「みなし残業」制度のデメリット

 一方、次のようなデメリットもあります。

■会社側のデメリット
  残業時間が、「みなし残業」として決められた時間に満たなくても、一定の残業代を支払わなければなりません。

■労働者側のデメリット
 みなし残業代は割増賃金の対象外です。そのため、みなし残業時間を超えて深夜残業や休日出勤等をしたとしても、割増された残業代を支払われることはありません。

メリットがある反面デメリットもあるという、諸刃の剣の側面が「みなし残業」制度にはあるのです。そのため、会社は企業経営に有利になるような「みなし残業」制度に悪用してしまうことがあります。
しかし、このような「みなし残業」制度は、場合によって違法の可能性が考えられます。

違法なみなし残業を見分けるポイント

 それでは、違法の可能性がある「みなし残業」制度とはどういったものしょうか。主に以下の4つが考えられます。

【違法①】固定残業代が明確にされていない

 まず、よくあるパターンは「固定残業代が明確にされていない」です。
 求人情報を掲載しているサイト等を見ると、下記のような「みなし残業」を取り入れている求人が見受けられます。

①「月給25万円(みなし残業時間手当40時間分含む)+交通費(上限3万円)」
②「月給22万7350円(一律残業手当含む)」

3社に1社くらいの割合で、このような内容が曖昧になっているのが現状です。①は残業代がいくらなのかが明記されておらず、②に至っては、残業代の時間も金額も全く記されていません。

「みなし残業」制度を取り入れているのに、その金額や時間がはっきりしていないようであれば、その制度は成り立っていないも同然であり、違法の可能性が考えられます。

【違法②】超過部分の割増賃金が支給されない

 「みなし残業」制度では、みなし残業時間を超えて働いた場合は、超過分に対して別途、残業代を支給しなければなりません。
 ですが、「うちの会社の残業代は固定だから」という理由で、事前に決められた残業時間を超過したとしても、残業代の支払いから免れようとする会社も存在します。
 このような会社は、違法行為に当たる可能性があります。

【違法③】みなし残業代の一部、または全額が支給されない

 また、前もって決められた残業時間に届かなかった場合に、みなし残業代の一部、または全額を支給しないケースもあります。この場合も違法に当たる可能性が考えられます。

【違法④】最低賃金を下回る

 「みなし残業」制度を採り入れたとしても、1時間あたりの賃金が最低賃金を下回ってはいけません。

→1時間あたりの賃金の計算方法はこちらで詳しく説明をしています。

 例えば、東京都で働くAさんが、

・1日の所定労働時間は8時間
・1ヶ月の所定労働日数は23日
・給与は(基本給170,000万円)+(30時間分のみなし残業代30,000円)=200,000

だとします。
 東京都の最低賃金は958円(2017年10月1日現在)です。よって、この958円で計算する基本給とみなし残業代の合計を下回ってはいけません。
計算してみましょう。

(1)基本給…958円×8時間×23日=176,272円
(2)みなし残業代…958×1.25(割増率)×30時間=35,925円
(3)合計…176,272円+35,925円=212,197円

Aさんの給料は、958円で計算した合計を下回っています。ですので、Aさんは違法な「みなし残業」制度で勤務をしている可能性が考えられます。

みなし残業時間が60時間を超える場合

 1ヶ月のみなし残業時間が60時間を超える場合は、割増賃金は1.5倍になります。

 例えば、みなし残業時間が80時間だとします。このケースでは、80時間の内、20時間は1.5倍の割増賃金で計算をしなければなりません。

→残業時間が60時間を超えた場合の割増賃金についてはこちらの記事で詳しく説明をしています。

 もし、上記の【違法①】~【違法④】に該当することが考えられる方は、違法の「みなし残業」制度でサービス残業をしていることが考えられます。
未払い残業代の請求をした方がよいでしょう。

未払い残業代に泣き寝入りしてはならない

なぜ、会社はこの「みなし残業」制度を利用して労働者にサービス残業をさせるかというと、会社の利益は、「売上-費用」で決まり、人件費は費用のうち最も大きな割合を占めるからです。

したがって、人件費をいかに抑えるかを工夫することは、会社としては当然の考え方です。残業代はある意味、会社にとっては計算外の人件費です。しかも残業代の出費は変動コストで社員が無制限に残業していれば、人件費がどれだけ膨らむかわかりません。

そこで会社は「みなし労働」等によって変動コストを固定的なコストにすることを考えるのです。このように会社はなんとか人件費を抑えようと知恵を絞り、法律の許す範囲で“ギリギリセーフ"を目指します。しかし、ほとんどの場合はセーフではなくアウトなのです。

こうしたことを知らぬまま過ごしていると、否が応にも毎日サービス残業を行い、その結果、未払い残業代がどんどん積み重なっていくことになります。積み重なっている未払いの残業代は、実際に残業をした人の賃金です。請求すれば、自分の収入として受け取ることが出来ます。

→自分がどれだけの未払い残業代があるか、こちらで確かめることができます。

ただし、残業代など賃金の請求権は2年で時効となり消滅します。黙っていると、2年の経過とともに毎月毎月、せっかく働いて稼いだはずの報酬が消えていってしまいます。まだ請求すれば間に合う未払い残業代があるのであれば、時効になる前にぜひ請求することをお勧めします。

→残業代請求権の時効2年については、こちらで詳しく説明しています。

売り上げが思うように上がらず、コストアップ要因ばかりが増大する中、会社の業績は苦しいかもしれません。
しかし、だからといって、賃金の未払いが許されるわけではないのです。

サービス残業をしていることが分かっていて泣き寝入りしていると、あとから入ってくる後輩社員たちも同じようにサービス残業を強いられることになります。残業代を不払いにすることで、利益を少しでも多く上げようという考え方はフェアではありません。

近年、企業社会においてはコンプライアンス(企業などが法令、規制をよく守ること)の重要性が叫ばれています。その意味でも、未払い残業代請求はしやすくなっていると言えます。実際に、未払い請求をして540万円の不払い賃金が返ってきたという判例もあるほどです。

弁護士が残業代請求については相談に乗ってくれる

残業代請求の手続きは、そこまで難しいものではありません。

2008年に某有名ハンバーガーチェーン店の店長が未払い残業代について会社を相手に訴訟を起こしましたが、この時は、一審(地方裁判所)では決着せず、かなりのエネルギーを要することになりました。しかし、たいていの未払い残業代請求はそこまで覚悟する必要はありません。

とはいえ、未払い残業代は会社に直接請求しても「了解しました、支払いましょう。」とはなりづらいでしょう。やはり専門家に、間に入ってもらわないと解決がされにくいです。

そのため、まずは弁護士に相談することが有効な手段です。弁護士なら残業代の計算から請求の手続きまで、その人に合った的確なアドバイスをしてくれます。
そして、残業代を裁判で回収しようとしたケースになれば、弁護士は裁判の際も代理人として本人の代わりに活動してくれます。

残業代請求に強い弁護士はこちらから

2種類の「みなし残業」制度

 さて、「みなし残業」制度には、法的な観点からいうと以下の2種類があります。


➀裁量労働制に基づく「みなし残業」
②固定残業性に基づく「みなし残業」

まず、➀裁量労働制に基づく「みなし残業」から説明していきます。

①裁量労働制に基づく「みなし残業」

裁量労働制とは、上司の目が直接には届かない会社の外で仕事をしている営業職のように労働時間で管理することが難しい労働者や、時間で賃金を決めることに馴染まない労働者(コンサルタント、研究者、システムエンジニア)に対し、「労使協定(労働者と会社の間で取り決めした内容を書面化したもの)を結んで、合意した時間数(所定労働時間)を1日の労働時間とみなす」制度です。

これを適用するには、以下の3職種の形態のように出勤時間や退社時間、昼休みなどの時間配分を社員が自身の決定で行っている必要があります。

1. 事業場外みなし労働制:直行直帰の営業や在宅勤務(東京労働局にて詳しい説明がされています。
2. 専門業務型裁量労働制:コンサルタントや研究者など専門職
3. 企画業務型裁量労働制:経営企画室スタッフ

→さらに裁量労働制について知りたい方はこちらの記事で詳しく説明をしています。

これらの形態で働いている労働者の中で、労使協定で結んだ所定労働時間が法定労働時間(労働基準法で定められた労働時間の限度のことで、原則として1週で40時間、1日に8時間と定められています)を超える場合、その超えている時間のことを「みなし残業」といいます。


例えば、所定労働時間が9時間の場合、1時間が1日のみなし残業時間であり、定時で帰った日も、3時間残業した日も、1時間の残業をしたものとしてみなされます。
月の労働日数が21日であれば、1時間×21日の計算で、21時間分の割増賃金額が実労働時間の長短に関わらず、毎月固定で支給されます。

→割増賃金の計算方法は、こちらで詳しく説明しています。

裁量労働制におけるトラブル例

みなし労働時間制を適用するには、出勤時間や退社時間、昼休みなどの時間配分を社員が自身の決定で行っている必要もあるのですが、実際は違うことが多いです。多くの場合、出勤時間や退勤時間も決められ、かつそれに縛られていますし、勤務中にきっちり上司に管理されています。
例えば、以下の場合です。


外勤の社員が他の社員同様に朝9時に出社し、朝礼で上司の指示を受けて外出。訪問先での商談が終わる度に会社から貸与された携帯電話で報告し、夕方も帰社して上司に「ただ今、戻りました。」と挨拶してからデスクで事務処理する。

これは明らかに1日中、上司に管理されているも同然であり、自身の決定で仕事をしていることにはなりません。
実際には、帰社後の事務処理に2時間も3時間もかかり、退社するのはいつも21~22時で、ほぼ毎日管理されながら10時間以上も働いていて法定労働時間の8時間を超えているのにも関わらず「みなし労働だから残業代は払わない」としている会社が非常に多いのです。

深夜労働や休日労働には割増賃金を払わなければなりませんが、これも「みなし労働時間制」の名のもとにカットされているのが現状です。

②固定残業制に基づく「みなし残業」

固定残業制とは、基本給の中にあらかじめ残業代が含まれている制度です。この固定残業制は、裁量労働制とは違い職種の制限がないので、全ての労働者が対象になる可能性があります。


例えば、「基本給30万円(うち5万円は「みなし残業代」とする)」というような文言を、雇用契約書で交わすイメージです。もしくは、「基本給30万円(20時間分の残業代を含む)」というような定め方もできます。

「みなし残業制度」と「フレックスタイム制」

 これまでの説明でお分かりいただけるように、実際勤務した労働時間数に関わらず毎月決められた額を支給するのが、「みなし残業制度」です。
 ここで複雑になりがちなのが、「みなし残業制度」と「フレックスタイム制」を併用している労働者です。

 例えば、ある月、「フレックスタイム制」で規定されている所定労働時間に満たなかったとします。その場合は、「みなし残業制度」で毎月決められた額から差し引かれることはあるのでしょうか。

 これについては、基本給から控除されます。つまり、併用しているとはいえ「フレックスタイム制」で起きた不足分に関しては「みなし残業制度」には影響しないのです。

→「フレックスタイム制」についてはこちらの記事で詳しく説明をしています。

「みなし残業制度」と「年俸制」

 では、「年俸制」で「みなし残業制度」を採り入れているケースはどうなるのでしょうか。
 年俸制では、「年俸には1ヶ月〇〇時間、〇万円の残業代を含める」というような契約内容を交わします。
そのため、年俸制でも事前に決められた残業時間を超えて残業をした場合は、追加の残業代が支払われなければなりません。

 年俸制では、「年俸には1ヶ月〇〇時間、〇万円の残業代を含める」というような契約内容を交わします。
そのため、年俸制でも事前に決められた残業時間を超えて残業をした場合は、追加の残業代が支払われなければなりません。

「みなし残業」制度の廃止

 会社が「みなし残業」制度を廃止することがあります。
その際、廃止することによって、給与が減給してしまう等、労働者に不利益が被る変更をしてはならないといった内容が、労働契約法10条に定められています。
この、労働者に不利益が被る変更のことを「不利益変更」といいます。

 そのため、「不利益変更」があった場合は、就業規則あるいは労働契約書等の資料を持って、弁護士に相談することをオススメします。

残業代請求に関する困りごとは弁護士へ相談を

仕事量が多く長時間の労働になりがちな人は、不当に残業代が支払われていない可能性が高いです。

そのような問題から労働者を守るために労働基準法がありますが、違法性を訴えるといっても、法的知識が必要になります。

そこで頼りになるのが「弁護士」の存在です。

法律のプロである弁護士なら、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、労働上で起きやすいトラブルを未然に防いでくれます。

労働トラブルに詳しい弁護士に事前に相談しておくのがおすすめです。

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