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「業界別・残業週20時間以上の労働者割合」に見る残業時間が減少した背景

更新日:2021年06月09日
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まずは、下記のグラフをご覧ください。

業界別・残業週20時間以上の労働者割合

このグラフは業界別で残業週20時間以上の労働者の割合を、2008年と2018年でそれぞれ算出し比較したデータです。
 近年、ワークライフバランスを重視する労働者の増加や、政府が推進する働き方改革の影響もあり、多くの業界が2008年より2018年の方が週20時間以上の残業をしている労働者の割合が減少しています。
 その一方で、増加している業界が存在します。それは「教育・学習支援業」「電気・ガス業」です。この違いはどこからくるものなのでしょうか。
本記事ではその点を読み解いていきたいと思います。

減少している業界

 はじめに、残業週20時間以上の労働者の割合が減少している業界について見ていきましょう。
 減少している業界は運送・郵便業、建築業、宿泊・飲食サービス業、卸売・小売業、情報通信業、不動産・賃貸業、製造業、金融・保険業、総合サービス事業、医療・福祉業です。

運送・郵便業に見る残業時間が減少した要因

 まずは、残業週20時間以上の労働者の割合が多い運送・郵便業を見ていきましょう。運送・郵便業は残業週20時間以上の労働者の割合が、2008年の21%に対して2018年は17%と、4ポイント減少しています。

 減少している背景には、政府の働き方改革だけでなく、宅配業界大手のヤマト運輸と佐川急便の2社による残業問題が浮き彫りにされたのも要因に挙げられるでしょう。
佐川急便は、2017年にドライバーが過労死ラインを超える残業をしていることでニュースになりました。
 ヤマト運輸も同じく2017年に、巨額の未払い残業代が発覚し世間を騒然とさせました。

 いずれも、労働者にとっては苦境を強いられる事件でした。この大手2社による残業問題が、運送・郵送業の労働環境を良化させる大きなきっかけになったと考えられるでしょう。
 結果、2008年より2018年の方が残業週20時間以上の労働者の割合が4ポイント減ったのと考えられます。

減少した業界は過去に残業代について問題になっている

 実際、運送・郵便業以外の残業時間が減少した業界も、過去に残業代に関するニュースで話題になっています。いくつかの業界をピックアップして見ていきましょう。

■建設業
2012年、厚生労働省が発表した「不払いになっていた残業代の是正結果」によると、全業種の中で最も多いのが建設業だった

■宿泊業・飲食サービス業
 2016年、飲食店の従業員が月200時間を超えるサービス残業を強いられました。結果、精神疾患を発症した等として、会社に対し慰謝料を含めた未払い分の賃金、約1,100万円を求めて東京地裁に提訴しました。

■卸売・小売業
 2014年、食品スーパーで働く男性社員が42歳で過労死しました。亡くなる前、男性社員が友人宛てに送ったメールによって、「過酷なサービス残業」の実態が明るみになりました。

■情報通信業
 2015年、大手広告会社の新入社員が月100時間を超える長時間残業の末、自殺をしました。遺族らは政府に対し、労働時間の規制を設ける法改正を求めました。

■不動産・賃貸業
 2017年、某大手不動産会社が社員600人に対し、不正に裁量労働制を適用していた事実が発覚しました。それにより、不当に残業代が支払われていないことが明らかになりました。

■製造業
 製造業では、かねてから継承者の不足が減少を招いていました。加えて、早期の納期を求められることがあると、労働者に負担がかかり長時間残業が助長されました。

■医療・福祉業
 2017年、和歌山市の某社会福祉法人が4ヶ月に渡って職員20人の残業代を支払いませんでした。一部メディアでは2年もの間残業代が支払われていなかったとも報じられています。

 共通しているのは、2018年よりも以前に残業代に関しての問題が起こっているということです。その残業問題が労働環境を見直すきっかけとなり、業界全体の残業時間を減らすという行動に繋がったのではないでしょうか。

増加している業界

 それに対し、増加している業界はどうなのでしょうか。
 電気・ガス業は、とりわけ目立った残業問題はなかったものの、教育・学習支援業に関しては話題になったニュースがありました。
 それは、2018年10月、教員に残業代が支払われていないのは違法だとして、埼玉県の私立小学校の男性教員がさいたま地裁に提訴した事件です。

 とはいえ、これは2018年の事件です。業界全体の労働環境の改善は2019年以降になされるのではないか、と考えられます。

増加している業界もそのうち減少

 2019年4月に働き方改革が施行され、残業時間の規制等が始まっています。教育・学習支援業をはじめ、増加している業界も遠くない将来、残業時間が減少すると考えられるでしょう。

残業代が支払われていない場合は請求を検討すべき

 ここからはそれぞれの業界がどのくらいの残業代が出ているのかについて見ていきます。下記は2018年に総務省の統計局が発表した「労働局調査」を基に当サイトが独自に算出した、業界別の「1時間当たりの賃金」と「1時間当たりの残業代」です。

業界 1時間当たりの賃金 1時間当たりの残業代
運送・郵便業 1,837円 2,341円
教育・学習支援業 2,702円 3,378円
建築業 2,038円 2,548円
宿泊・飲食サービス業 1,519円 1,899円
卸売・小売業 2,114円 2,643円
情報通信業 2,569円 3,212円
不動産・賃貸業 2,058円 2,573円
製造業 2,006円 2,507円
金融・保険業 2,758円 3,448円
総合サービス業 2,154円 2,692円
電気・ガス業 2,940円 3,675円
医療・福祉 1,994円 2,492円

上記のデータを基に、毎週20時間の残業を1ヶ月続けたとすると、いくらの残業代が発生しているのかを算出してみます。
 期間を約1ヶ月に相当する4週間で計算してみました。するとぞれぞれ下記のような数値になったのです。

運送・郵便業 187,280円
教育・学習支援業 270,240円
建築業 203,840円
宿泊・飲食サービス業 151,920円
卸売・小売業 211,440円
情報通信業 256,960円
不動産・賃貸業 205,840円
製造業 200,560円
金融・保険業 275,840円
総合サービス業 215,360円
電気・ガス業 294,000円
医療・福祉 199,360円

約1ヶ月で上記のように多くの残業代が発生します。
 もし、上記に羅列されている業界で、週20時間以上の残業をしているにも関わらず、残業代が支払われていない方は請求の検討をした方がよいでしょう。
 上記の表を見て分かる通り、多くの残業代が未払いになっている可能性があるでしょう。

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残業代請求弁護士ガイド 編集部

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