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在職中に残業代請求を行う「メリット」と「起こりやすいトラブル」

更新日:2020年09月04日
在職中に残業代請求を行う「メリット」と「起こりやすいトラブル」のアイキャッチ

残業代請求のタイミングは、会社内の人間関係を憂慮して、在職中ではなく退職後に行う人の方が多い傾向にあります。確かに在職中に行うと上司等とトラブルが起きる可能性は否定出来ません。
 しかし、実は、残業代請求は在職中に行う方がメリットは大きいのです。

本記事では、在職中に残業代請求を行うメリット」と「起こりやすいトラブル」にスポットを当ててご説明させていただきます。また、トラブルの対処法もお伝えします。
在職中の残業代請求に関する予備知識を蓄えて、未払い分を正当に回収しましょう。

在職中に残業代請求を行うメリット

 はじめに、在職中に残業代請求を行うメリットについて触れていきます。具体的に、以下のようなメリットがあります。

【メリット①】消滅時効にかかりにくい

 残業代の請求権は2年で消滅時効にかかります。給料日から2年を経過すると、残業代を請求出来なくなるのです。
 退職後の残業代請求を検討していると、請求権がなくなる未払いの残業代が発生する可能性があります。

 ですので、在職中に残業代請求をすることで請求額の減額を避けるメリットがあるのです。

【メリット②】確実に証拠を集められる

 残業代請求を行うためには、残業をした事実が客観的に分かる証拠を集める必要があります。これは請求者に立証責任(確実な証拠で証明する責任)があるためです。
 残業の事実を立証するものは、労働契約書や就業規則等の労働条件を把握出来る書面、タイムカードや勤怠表等の出勤状況が分かるもの等が挙げられます。

 退職後に残業代請求を行うと、会社がそれらを改ざんして未払い残業代の発生を隠蔽する可能性が考えられます。
 在職中であれば、自身で確実な証拠を収集出来るので改ざんされる心配がないのです。

【メリット③】労働条件の改善が期待出来る

 労働条件の改善が期待出来るというメリットもあります。
 未払い残業代を発生させる会社は、上司が、残業代に関する正確な知識を持っていないというケースも挙げられます。そのようなケースでは、労働者が在職中に法律に基づいた未払い残業代を請求することで、労働条件が改善されるきっかけになるかもしれません。
 もし、改善が行われれば、今後もその会社で、働きやすくなるでしょう。

起こりやすいトラブル

 以上のようなメリットがある反面、トラブルが起きる可能性があります。ただ、実はそのトラブルは会社側の違法になる可能性があります。ですので、毅然として残業代を請求しても問題はありません。
 では、在籍中の残業代請求で起こりやすいトラブルとは、何でしょうか。主に以下のようなトラブルが考えられます。

【トラブル①】嫌がらせ

 在職中に残業代請求を行うと、上司から「無理のある工数の業務を押しつけられる」「全く仕事が与えられず社内で孤立させられる」等の嫌がらせを受ける可能性があります。
 ですが、未払いの残業代を請求することは、労働者にとって正当な権利です。残業代請求を理由にした嫌がらせは、労働安全衛生法の規定にある「事業者は、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない」に違反している可能性があります。

【トラブル②】報復人事

報復人事は、例えば、地方の事業所や閑散部署に左遷されたり、降格・減給させられたり等が挙げられます。
 しかし、報復人事は、労働契約法第3条第5項に定められている「労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない」に違反する可能性があります。

【トラブル③】損害賠償請求

 在職中に残業代を請求すると、今までに仕事上で起こしたミスや事故に対する損害賠償請求をされるケースがあります。
 しかし、たとえ労働者のミス等が原因で損害を起こしたとしても、会社側はただちに雇用者に損害賠償請求をすることは認められていません。
 それは、「社員の故意や重大な過失がない限りは、全ての責任が社員に課せられることはない」という判例文が根拠になっています。

 以上①から③の他にも、起こり得るトラブルもあります。それについては、「残業代請求をする際に心配するそのリスク、会社側の違法行為かも」で触れています。併せて見てみてください。

トラブルの対処法

 違法性があるとはいえ、以上のトラブルは出来る限り避けて、在職中の残業代請求を行った方がベターです。
トラブルを避けるためには、冷静に会社と対応をする姿勢が欠かせません。その姿勢をキープする手段としては、以下の方法が挙げられます。

【対処法①】労働組合を通して請求

 まず、労働組合を通じて残業代請求をする方法が挙げられます。
 労働組合とは、労働者が団結して、労働環境の改善を求めて雇用主と交渉するための団体のことをいいます。
大企業の場合は、社内に労働組合が存在する場合が多いです。しかし、中小企業には、社内に労働組合がない場合が多いです。その場合は、月額1,000円程で加入出来る個人加盟労働組合に入るとよいでしょう。
 労働組合には、団体交渉権(賃金や解雇等について労働者団体が会社と交渉する権利)を持っているため、感情的にならず交渉することが期待出来ます。

【対処法②】弁護士に依頼

 残業代請求を弁護士に依頼すると、手続を代行してくれます。それだけでなく、パワハラや解雇等のトラブル等も併せて対応も行ってくれます。そのため、在職中の残業代請求を安心して行えるでしょう。
 弁護士に依頼する際は、残業代請求に強い弁護士に相談をしましょう。というのも、残業代請求に強い弁護士は、労働者と会社の間の問題について、円滑に解決するための豊富な交渉術を持っているためです。

終わりに

 残業代請求は在職中に行うことは多くのメリットがありますが、トラブルの引き金にもなる可能性があります。それを心配して在職中の残業代請求に踏み出せない方も少なくありません。
 しかし、退職後に残業代請求を行うと、回収出来るはずの未払い分をもらえない可能性が考えられます。長い間、会社に在籍した人ほど、その可能性は高いです。

 本記事で紹介したように、在職中の残業代請求で考えられるトラブルは違法性があります。ですので、それでも不安が残る方は、労働組合や弁護士等の第三者を通じた、在職中の残業代請求をしてみてはいかがでしょうか。

 本記事をきっかけに、もらえうるはずの残業代を回収出来ることが出来たら幸いです。

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